JAZZ遊戯三昧

オススメのジャズアルバムを紹介してます。

Hironori Momoi 桃井裕範 Flora and Fauna

羨ましい才能

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 オフィシャルサイトのプロフィールを読んで貰えばわかるけれども、

そんな情報を知らず、この新作「Flora and Fauna」を聴いて、

あー音楽は進化しているんだなぁと、羨ましく、妬ましい気分にさえなった。

 

プロフィールの紹介に、Drummer/Composer/Producerとある。

ドラマーというよりは、むしろプロデューサー、作曲家としての才能の面白さ。

ジャズの範疇に止まらない音楽ではあるが、極めてジャズっぽい。

どの曲も、ジャズを感じさせてくれる、自由とスペースに溢れた色っぽさがある。

正直、聴き惚れてしまった。

とてもイイ感じなのである。

 

こういう、可能性を広げてくれるような、新しい音楽を聴くと、

時代に取り残されたようで、寂しい気持ちにもなるが、

やはりワクワクするし、嬉しくなる。

 

最近、アルバムの作り方が、

様々なゲストを呼んで、ゲストの個性を生かしながら、

ホストの多様な、音楽的アプローチを綴っていくと言った、

作品制作の手法が増えてきているように思うが、

この作品も、その手法が、ホストである桃井の才能の素晴らしさと多様さを

十分に引き出すことに成功している。

曲一つ一つの表情が、違うのだが、トータルとして非常に満足度の高い、

全体性を獲得していると言うか・・・

非常にセンシティブで、敏感で、気負いのない音づくりは、

本当に心地よく、時の流れるままに、聴かせてしまう力がある。

 

タイトルの「Flora and Fauna」 は、植物相と動物相と言う意味なのか?

確かに、ホスト=植物的な地に根の生えた静的でステディな領分と、

    ゲスト=動物的な気ままで攻撃性のある動的でスポンティニアスな領分とが、

上手く共存、融合、触発し合っていような気がする。

 

ぜひ、多くの人に知ってもらいたい、日本の羨ましい才能である。

 

 

01. Into the Stratosphere feat. Nir Felder
02. Skin Deep feat. 佐瀬悠輔
03. Fog feat. Gotch
04. Tail of a Comet feat. Gilad Hekselman
05. Gray Rhino feat. 角田隆太 (from モノンクル)
06. Touches feat. なみちえ and Potomelli
07. IHDS
08. Bury the Hatchet feat. 松丸契
09. Gemini feat. Alan Kwan
10. Water Temple feat. Gold Mountain
11. Regression feat. MELRAW
12. Through the Seasons
13. Hands feat.ミゾベリョウ (from odol)

 

 


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Mccoy tyner マッコイ・タイナー Real Mccoy

孤高の人

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マッコイ・タイナーについて書きたいと思う。

この1967年に録音された、ブルーノートレコード移籍の第一段となった、

本アルバムは、彼のスタイルがある意味完成された金字塔である。

 

また、人選、選曲、アルバムジャケットなど、

どれをとっても、気合の入った、名盤中の名盤だ思う。

 

マッコイ・タイナーは根っからのピアノのイノベーターであり、即興家であるが、

オーガナイザーとしては、ハンコックやチック・コリアらのようなバイタリティを

持ち合わせていなかったことは、その後の彼の変遷を見れば明らかなことである。

ブルーノート時代に残したこの後の軌跡を見ても、ハンコックとは対照的に、

どこか野暮ったく、真面目で、不器用な作品の感を受ける。

マッコイも同時代のハンコックの活躍は相当、意識していたとは思うのだが・・・。

 

しかし、語り尽くされたことかも知れないが、

彼の生み出した奏法は、いわゆる4度重ねのハーモニーの浮遊性を生かし、

ダイナミズムに溢れたものであり、その圧倒的な即興のあり様は、

ジャズピアノスタイルの金字塔として、燦然と輝いているのである。

 

孤高の人、マッコイ。

何より、その後の数々のジャズピアニストに圧倒的な影響力を与えてきたことを

今一度評価すべきだと思うのである。

マッコイより前にこんなピアノを弾く人はいなかった。

特にインパルスからこのブルーノートに移籍する間に、

自らの奏法に磨きをかけて、非常に完成度の高いスタイルを完成させるために、

相当、苦労して、練習して、研究したのであろう。

明らかに、コルトレーン時代のマッコイとは、一線を画している。

そうした、マッコイの気合と意気込みを感じさせるアルバムなのである。

まさに、「モーダルなジャズ」と表現する時の代名詞のような作品である。

 

それにしても、ジョー・ヘンダーソンのカッコいいこと!

(特に、最後の「Blues On The Corner」のジョー・ヘンのソロ)

マッコイ、エルビンらとの相性も最高で、非常にブルージーで、

彼にとっても最良の演奏の軌跡となっている。

 

McCoy Tyner (p)

Joe Henderson (ts)

Ron Carter (b)

Elvin Jones (ds)

 

1.Passion Dance

2.Contemplation

3.Four By Five

4.Search For Peace

5.Blues On The Corner

 


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Arroyito Dúo アロシート・デュオ Raigal

アルゼンチンの風

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カルロス・アギーレつながりで知った、

アルゼンチンのデュオユニット、「アロシート・デュオ」。

このユニット、3作目のアルバムということである。

 

ジャズではないけれども、

つい、紹介したくなってしまう、アルゼンチンの音楽。

アルゼンチン音楽の特有の8分の6拍子のリズムに乗って、

奏でられる、確かなインストルメンタル

そして、透明感のある、ヴィクトリア・デ・ラ・プエンテの歌声。

 

アルゼンチンの音楽を聴いて、いつも感じるのは、

ボサノバの「倦怠」とは違って、

「希望」とか「風」、「大地」、「慈しみ」といった言葉がピッタリくるような、

とても幸せで、前向きな気分にさせてくれる何かがあること。

 

アルゼンチンの国旗の、

「青」は大空・正義・真実・友情・海や国土などを表し、

「白」は国を潤す母なるラプラタ川を表しているそうである。

壮大な自然と、ヨーロッパと南米の融合した文化の国、アルゼンチンを、

いつか、訪れてみたい!

 

ictoria de la Puente – vocal
Nehuén Rapoport – guitar, bass (1, 3, 4, 6, 7), vocal (1, 3, 4, 6, 7)
Mario Galván – piano, keyboard
Franco Giovos – drums, percussion
Paula Giovannetti – bandoneon (2)
Matías Jablonsky – flute (2, 3, 6, 7)
Santiago Rapoport – contrabass (5)
Carlos “Negro” Aguirre – accordion, vocal (4)

1) Pararse en la mitad
2) Yo tuve un acierto
3) Soy del sur
4) Dame el agua
5) El desorden del viento
6) Serena
7) Dactilar

 

 

カルロス・アギーレをフャーチャーした4曲目の「Dame el agua」


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リオ・ネグロ州文化庁が主催したコンテストで最優秀賞を獲得した、「Soy del sur」


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David Sanborn デイヴィッド・サンボーン Backstreet

サンボーンとマーカス・ミラーの相性

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デイビィッド・サンボーン自体を語るのは難しい。

 

様々なアーティストのレコーディングに客演し、ツボを得たソロを披露して、

曲全体のクオリティに華を添えると言った立ち位置が、

サンボーンにとって、自身の魅力を発揮できる最高の環境であったような気がする。

 

サンボーンの演奏というのは、本質的に客演ソリストとして、

あのサンボーン節を、曲の途中に、放り込むことによって、

一挙に洗練されたフィーリングを醸成させ、心に響いてくるのであって、

テーマからソロと全編、サンボーン節で構成された数々のリーダーアルバムは、

やはり、しつこく感じるのである。

アルバムを通して聴いていると、だんだん食傷気味で飽きてくるのである。

 

ただ、マーカス・ミラーという職人はそうしたサンボーンの特質を知り抜いていて、

ロディアスでグルービーなミラーサウンドで、

サンボーン節そのものを緻密に構成し、オーケストレーションすることによって、

一つの飽きのこない楽曲として成立させてしまったのである。

 

このアルバムは、ある意味、マーカス・ミラーの作品と言える。

例えば、冒頭の「I Told U So」を聴くと、

むしろチープな打ち込感の中で、ミラーのベースの強烈なグルーブ感を頼りに、

サンボーンが気持ちよさそうに吹いているだけの曲かも知れないが、

サンボーン節が、そのまま楽曲メロディとして構築・編成されているため、

しつこく感じないのである。実にスムーズでメロディアスで洗練されている。

マーカス・ミラーの驚くべき才能のなせる技なのである。

逆に、マーカス・ミラーもサンボーンという個性的な素材と出会えたことで、

自らのオーガナイザーとしての本領を発揮できたとも言える。

 

二人のコラポレーションとしては、

最高にヒップでファンキーな成果を残したのが、

このアルバムなのではないかと思う。

個人的には、「ハイダウェイ」も大好きなのだが・・・。

 

David Sanborn(as, ss),

Marcus Miller(b, el-p, p, synth, g, perc, vo, vocoder),

Michael Colina(synth, p, vocoder),

Huram Bullock(g, el-p, synth-b),

Steve Gadd(ds),

Ralph McDonald(perc),

Buzz Feiton(g),

Luther Vandross(vo), Tawatha Agee(vo), Yvonne Lewis(vo), Barry Johnson(vo)

 

1 I Told U So
2 When You Smile At Me
3 Believer
4 Backstreet

5 A Tear For Crystal
6 Bums Cathedral
7 Blue Beach
8 Neither One Of Us


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ICHIKO HASHIMOTO 橋本一子 VIEW

いやらしさ と 純粋さと

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黙って聴けと言われているようである。

言われた通り、黙って聞いた。いや、黙ってしまった。

 

彼女のキャリア、メンバーの人選、選曲、エフェクト、嗜好、ピアニズム、

ノスタルジーと現代性、いろいろなエレメントが、演奏の中に交錯し、複層し、

様々な表情を見せている。

 

橋本一子

純粋で傷つきやすく、脆い側面と、

斜に構えた、現実的でいやらしく、したたかな審美眼が、

良い塩梅で同居している。

 

彼女のピアニズムは、元々、昔から、露骨なアンビエントなテイストが、

少し鼻について、敬遠気味ではあったのだが、

時を経て、この作品での、達観したような正直で朴訥とした彼女の吐露は、

他のメンバーとの触発によって、実に熟成した「音楽」に成就している。

素晴らしい。

美しい。

聴き惚れました。

 

9曲目「danny boy」、

11曲目「 before and after the introduction」には

久しぶりに、震撼してしまいました。

 

橋本 一子 (p, vo)
菊地 成孔 (as)
類家 心平 (tp)
藤本 敦夫 (ds, b)
橋本 眞由己 (cho)

 

1. blue
2. view
3. all the things you are
4. blackbird

5. giant steps
6. beijo partido
7. my foolish heart
8. good girl
9. danny boy
10. planet
11. before and after the introduction

 


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Glenn Zaleski  グレン・ザレスキー  My Ideal

信頼できるピアノ

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「信頼できるピアノ」

というタイトルも変ではあるが、

グレン・ザレスキーのピアノを聴いていると、

ジャズピアノとは、「かくあるべき」という感想がいつも出てくる。

 

このスタンダードを中心に取り上げた、ザレスキーの初リーダー作は、

ジャズピアノを試みるものにとって、

リズム、フレーズ、ハーモニー、インタープレイのあり方などなど、

ジャズの伝統に培われた様々な味わいのあるイディオムや豊富なアイデア

勉強することができる最高の教材でもある。

それだけテクニック的にも、歌心的にも、

先人の偉大なアーティストの知恵をよく吸収し、精通しており、

また、アプローチの仕方が実に素直(ストレート・アヘッド)であり、安定感がある。

そして、斬新で現代的な響きも併せ持っている。

(ラストのラビ・コルトレーンをフューチャーしたI'm Old Fashionedの解釈など)

 

いささか、誉めすぎかも知れないが、

ザレスキーのピアノを聴くと、いつも、

なんて整った、考え抜かれた、スマートな演奏なんだろうと感心してしまう。

アーロン・パークスやジェラルド・クレイトンのスタンダードの解釈も

素晴らしく、流石だなぁと感心することが多いのだが、

ザレスキーのピアノは、この二人とは違って、なんと言ったら良いのであろう、

もっと、学究的な匂いがするとでも表現したいような、

渋く地味だが、何度も読み返して味わいたくなるような、

そして読み返すたびに、新たな発見がある座右の名書のような存在と

言ったら良いかも知れない。

 

ザレスキーは、多分、知る人ぞ知る存在であり、

表に出てブレークするようなアーティストではないと思う。

しかし、一人、ほくそ笑みながら、

その硬質で豊穣な、奥行きのある職人プレイを堪能できる喜びに浸り、

幸せを味わえる、稀有な存在の一人なのです。

 

Glenn Zaleski - piano
Dezron Douglas - bass
Craig Weinrib - drums
Ravi Coltrane - tenor saxophone (track 9)

 

1. Nobody Else But Me (Jerome Kern)
2. Waltz For MD (Rick Rosato)
3. Make Someone Happy (Jule Styne)
4. Cheryl (Charlie Parker)
5. Body and Soul (Johnny Green)
6. REL (Peter Schlamb)
7. Arietis (Freddie Hubbard)
8. My Ideal (Richard A.Whiting)
9. I'm Old Fashioned (Jerome Kern)

 


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Jeff Lorber Fusion  ジェフ・ローバー・フュージョン SPACE-TIME

我が身に沁みる、フュージョン

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最近、70、80年代のフュージョンを良く聴く。
やはり、ノスタルジーなんだろうか。
 
ただ、かつてのフュージョンの大御所たちが、
ニンマリとした顔でリリースする新作は、
聴く気がしないのも、また常になっている。
 
しかし、このアルバムをたまたま試聴して、
ジェフ・ローバー、昔と変わらず、キレッキレッで、シンプル・ストレートで、
相変わらず、カッコイイ!!  なんて洗練されているんだろ!!
思わず聴き惚れてしまいました。
なんと言っても、この人の最大の特徴は、ファンキーなこと。
ファンキー節が心に染みるのである。
 
私は、結構、節操なく、多種多様な趣向のアルバムを
このブログで紹介していますが、
いろんなジャンルの素晴らしい音楽を聴いてみたいという欲張りな性格なんです。
 
ただ、私のプロフィールでも述べているように、自分自身が
「いい音楽に巡り会うと、ニンマリする、身体が揺れる・打ち震える、幸せになる」
と感じるものしか、アップしていません。
人の趣味嗜好なんか、主観的なものですし、人によって異なるのは当然だし、
結局、音楽から受ける印象とか感動といったものは、
厳密にいえば、共有できるものではないと思います。
ただ、少しでもいいので、この感動を自分以外の誰かに伝えたいという気持ちも、
抑えられない自分があることも、否定できません。
 
私のプログは、そういう意味で
非常に主観的で感覚的、感情的な側面が、強いと思います。
本当は、もう少し客観的なデータや逸話や裏話を盛り込んで、
読んで参考になる内容を充実すべきなのかも知れないのですが、
あえて、自己満足かもしれませんが、こうして伝えたい気持ちを、
ストレートに文章として残していく作業を、
今後もできる限り続けて、まずは、自分自身が楽しんでいきたいと思います。
そして、ごくたまに共感コメントをいただければ、
こんな嬉しいことはありません。
 
Jeff Lorber: Keyboards and Synth Bass
Jimmy Haslip: Electric Bass
Gary Novak: Drums
David Mann: Horn Arrangement/Performance
Paul Jackson Jr.: Guitar and Guitar Solo
 
1. Space-Time (feat Bob Mintzer)
2. Back Room
4. Mind Reader (feat Bob Mintzer)
5. Memorex
6. Louisiana (feat Michael Landau)
7. Curiosity
8. Chick (feat Hubert Laws)
9. Day One (feat Michael Landau)
10. The Truth
11. Memorex Reprise