気骨の結晶
もう、聴く前から期待できるのであるが、
実際、聴いてしまうと、遥かに期待を上回ってくる。
このトリオの前作「Time Remembered、も衝撃的で、
日本ジャズ界に新たな風が生まれたと興奮したものだが、
よりスポンティニアスかつ、自由なアイデアや新たな切り口に
満ちあふれていて、前作よりも一層飛躍している。
冒頭の一二曲を聴くと、
前作より、須川の思いやこだわりが前面に出ているような気がするが、
林と石若というメンバー無くして、
この緊張感と同時に解放感を感じさせる特異な音楽は
生み出せ得ないのは間違いない。
本質的に即興的な音楽だが、随分綿密に、三者で語り合ったのではないか。
計算された、フリーフォーム。
一方で、「Abacus」や「 Messe 1」、「 I Should Care」といった、
流麗な曲が、合間合間に挿入され、うまく緊張を緩和している構成も好ましい。
中でもいちばん震えた曲は、「Siciliano」。
慎ましやかで、あまりにも美しい。
三者が、それぞれ別の主張をしながら、結晶としてまとまっていく様を
戦慄しながら味わった。
世界に通用するピアノトリオの創造的作品である。
須川崇志 Takashi Sugawa (bass)
林正樹 Masaki Hayashi (piano)
石若駿 Shun Ishiwaka (drums)
2022年10月東京 Studio Dedé録音
1. Drizzling Rain
2. MASKS
3. Abacus
4. Bird Flew By
5. Doppio Movimento
6. Stefano
7. Siciliano
8. Messe 1
9. I Should Care
10. Wonderful One
こういうアプローチは、正直、凄いなぁと平伏してしまう。
この感覚はなかなか出せない。