サンボーンとマーカス・ミラーの相性
デイビィッド・サンボーン自体を語るのは難しい。
様々なアーティストのレコーディングに客演し、ツボを得たソロを披露して、
曲全体のクオリティに華を添えると言った立ち位置が、
サンボーンにとって、自身の魅力を発揮できる最高の環境であったような気がする。
サンボーンの演奏というのは、本質的に客演ソリストとして、
あのサンボーン節を、曲の途中に、放り込むことによって、
一挙に洗練されたフィーリングを醸成させ、心に響いてくるのであって、
テーマからソロと全編、サンボーン節で構成された数々のリーダーアルバムは、
やはり、しつこく感じるのである。
アルバムを通して聴いていると、だんだん食傷気味で飽きてくるのである。
ただ、マーカス・ミラーという職人はそうしたサンボーンの特質を知り抜いていて、
サンボーン節そのものを緻密に構成し、オーケストレーションすることによって、
一つの飽きのこない楽曲として成立させてしまったのである。
このアルバムは、ある意味、マーカス・ミラーの作品と言える。
例えば、冒頭の「I Told U So」を聴くと、
むしろチープな打ち込感の中で、ミラーのベースの強烈なグルーブ感を頼りに、
サンボーンが気持ちよさそうに吹いているだけの曲かも知れないが、
サンボーン節が、そのまま楽曲メロディとして構築・編成されているため、
しつこく感じないのである。実にスムーズでメロディアスで洗練されている。
マーカス・ミラーの驚くべき才能のなせる技なのである。
逆に、マーカス・ミラーもサンボーンという個性的な素材と出会えたことで、
自らのオーガナイザーとしての本領を発揮できたとも言える。
二人のコラポレーションとしては、
最高にヒップでファンキーな成果を残したのが、
このアルバムなのではないかと思う。
個人的には、「ハイダウェイ」も大好きなのだが・・・。
David Sanborn(as, ss),
Marcus Miller(b, el-p, p, synth, g, perc, vo, vocoder),
Michael Colina(synth, p, vocoder),
Huram Bullock(g, el-p, synth-b),
Steve Gadd(ds),
Ralph McDonald(perc),
Buzz Feiton(g),
Luther Vandross(vo), Tawatha Agee(vo), Yvonne Lewis(vo), Barry Johnson(vo)
1 I Told U So
2 When You Smile At Me
3 Believer
4 Backstreet
5 A Tear For Crystal
6 Bums Cathedral
7 Blue Beach
8 Neither One Of Us