JAZZ遊戯三昧

オススメのジャズアルバムを紹介してます。

Keith Jarrett キース・ジャレット The Out-of-Towners

キースのピアノの音色の美しさについて

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なんといっても

キースのピアノは、

音色が美しい。

 

ピアノの音ががこんなに優しく、華麗で、時に限りなく憂いを帯びて・・・

ピアノの音色の美しさにハッとさせられることが多いのは、

やはり、キース・ジャレットである。

 

ピアノのダイナミズムを知り尽くした男なのであろう。

聞いたところによると、

鍵盤の打鍵の軽さなど、調律師による、かなり特徴的な調整が施されているようだが、

スタインウェイの硬質でありながら柔らかい、あのなんとも言えない音の魅力を

キースは十二分に引き出してくれる。

 

二曲目の「You’ve Changed」を聴いてみてください。

出だしから、少し篭った感のある表情をみせながらも極めて硬質でストイックな

礼儀正しい音を紡ぎ出している。

音の表情に深みがあるのである。

これは、楽器のポテンシャルと、

演者の演奏技術(いわゆるタッチやフィンガリング)の双方が、

見事に融合し、昇華した結果であろう。

 

ライブ映像を見ると、非常に力の入った指使いで、

よくあんな強張った指使いで、あんなに美しい音が出るものだと、

いつも感心してしまうが、

キースならではの魔法のタッチが紡ぎ出す音は、唯一無二で限りなく美しい。

 

キースのタッチや音のことばかり書いてきたが、

このアルバムは、この往年のトリオのライブ作品の中でも、

珠玉の出来であり、特にキースが素晴らしい。

数あるスタンダーズの作品群の中でも、ぜひお勧めしたいアルバムである。

 

 

PERSONNEL:

Recorded in Munich, ECM's hometown, in 2001

 

TRACKS:

  • 01. Intro - I Can’t Believe That You’re In Love With Me

  • 02. You’ve Changed

  • 03. I Love You

  • 04. The Out-of-Towners

  • 05. Five Brothers

  • 06. It’s All In The Game

Sachal Vasadani & Romain Collin  サシャル・ヴァサンダーニ&ローマン・コリン Midnight Shelter

ミッドナイト・シェルター

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タイトル通りの音楽がある。

「ミッドナイト・シェルター」

 

サシャル・ヴァサンダーニのヴォイスも

ローマン・コリンのピアノの音色も

地下室のシェルターから漏れ聴こえてくるような、

内省的であるが、親密で穏やかな空気感を湛えている。

 

こんな音楽ばかり聴いていたら、

何もかも、やる気をなくしてしまう気もするが、

忙しい日常の中で、ふと、自分を省みるときに、

スッーと心に入り込んてくる、心地よい滑らかと優しさがある。

 

ローマン・コリンは、グレゴア・マレの「アメリカーナ」で、知ったピアニストだが、

サシャル・ヴァサンダーニは初めて聴いた。実に味わいの深い声の持ち主。

アルバムの紹介記事を見ると、二人とも素晴らしい才能と経験の持ち主であり、

様々な音楽上の活動の中で、一つのベクトルとして、

コロナ渦という時勢に合った、

このようなセンシティブなアルバムを世に出したことは、

非常に彼らのポテンシャルを感じる。

今後、注目していきたいアーティストである。

 

Sachal Vasandani Voice

Romain Collin Piano

 

1.Summer No School
2.Before You Go
3.Adore You
4.River Man
5.Great Ocean Road
6.Throw It Away
7.Don't Think Twice, It's All Right
8.Love Away
9.Blackbird
10.Dance Cadaverous
11.One Last Try

この曲お気に入りです! Summer No School


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ニック・ドレイクのRiver Man


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Marcos Valle & Stacey Kent  マルコス・ヴァーリ&ステイシー・ケント Ao Vivo

やはり手が伸びる

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マルコス、人妻のステイシーに手が伸びてるし、

自分も、なんやかんや言って、ステイシーのアルバムに手が伸びる。

 

なんてゴージャスで、軽妙洒脱な音楽なんでしょう。

音楽で、交歓し合う二人の成熟したやりとりが、伝わってきます。

ライブなのに、この完成度!

 

ステイシー・ケントの歌声や佇まいは、

やはり、他の歌手に見られない、特別な何かがある。

このライブを聴いて、改めてステイシー・ケントの素晴らしさを再認識した。

シルキーで、キュートで、どこか翳りがあって・・・

何度も日本に来ているが、一度も生で聴いたことがない。

コロナが収まったら、ぜひ、聴いてみたいアーティストの一人である。

 

YouTubeでこの二人の別の、クオリティの高いライブ映像もみられるが、

マルコスのステイシーに送る視線が官能的で、

旦那のジム・トムリンソンがヤキモキしないか、いらない心配をする。

それだけ、この二人の会話は、息があっていて、艶かしい。

 

マルコス・ヴァーリの芸歴長いだけじゃない、底力を感じさせてくれる、

素晴らしいライブアルバムをぜひご堪能ください。

 

PERSONNEL:

  • MARCOS VALLE, piano, vocals

  • STACEY KENT, vocals

  • JIM TOMLINDON, tenor sax

SIDE A:

  • 01. The White Puma (Puma Branco)

  • 02. Look Who's Mine (Dia Da Vitória)

  • 03. The Face I Love (Seu Encanto)

  • 04. The Answer (A Resposta)

SIDE B:

  • 01. Drift Away

  • 02.Summer Samba (Samba De Verão)

  • 03. Gente

  • 04. Passa Por Mim

SIDE C:

  • 01. Batucada Surgiu

  • 02. La Petite Valse

  • 03. If You Went Away (Preciso Aprender A Ser Só)

SIDE D:

  • 01. Pigmalião 70

  • 02. The Crickets (Os Grilos)

  • 03. She Told Me, She Told Me (Sonho De Lugar)

  • 04. My Nightingale


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Charles Lloyd & the Marvels チャールス・ロイド&ザ・マーヴェルス Tone Poem

ロイドは飛んでいく

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やっと全編聴いた。

オーネット・コールマンの2曲からスタートをしていることからして、

本アルバムの大らかさと自由を象徴しているし、

ロイドの調子の良さ、本気度が窺える。

 

今になって、本当に自由に飛翔している感じがする。

元々ビル・フリーゼルのサウンドは、

ロイドが創作するストーリーに、最適な解を与え得る、

エレメントを持っている。

 

ロン・マイルスの 「Rainbow Sighn」の時も感じたけれど、

メンバーの対話のあり様が、実に素晴らしい。

「それぞれが硬質で折り目正しく、他者を敬い、傷つけない」のである。

フリーゼルが入るだけで、そう言う空間が醸成されてしまうのかもしれない。

 

そして何よりもまして、

ヒップに、軽やかに、飛翔するロイドのテナーは、

もはや遊戯三昧の境地である。

有り難や、有り難や。

 

こう言う音楽を聴くと、もうこれだけでいいと思ってしまう。

(良い作品に出会うと、その度にそう言っているが・・・)

 

Charles Lloyd (tenor saxophone ,alto flute)
Bill Frisell (guitar)
Greg Leisz (steel guitar)
Reuben Rogers (bass)
Eric Harland (drums)

 

1 Peace (Ornette Coleman)
2 Ramblin’ (Ornette Coleman)
3 Anthem (Leonard Cohen)
4 Dismal Swamp (Charles Lloyd)
5 Tone Poem (Charles Lloyd)
6 Monk’s Mood (Thelonious Monk)
7 Ay Amor (Villa Fernandez Ignacio Jacinto)
8 Lady Gabore (Gabor Szabo)
9 Prayer (Charles Lloyd)

 

タイトル曲 Tone Poem    白眉の演奏です。


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Bill Evans ビル・エバンス Alone

「透徹した寂しさ」 タイトルどおりの音楽

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儚げなアルバムジャケット、

そして、エバンスが終生持ち続けたイメージにぴったりの

「アローン」というアルバムタイトル。

 

そのアルバムタイトルが象徴するように

硬質で鋭利な孤独感とでも言ったら良いであろうか、

何か人を寄せ付けない孤高で、媚びない姿勢が、全編通して貫かれている。

トリオデュオと違って、まさに自己との対話になるソロ作品において、

学究的で、かつ内省的な、エバンスにとって極めて本質的な特徴が、

そのまま、曝け出されているような気がするのである。

 

ピアノソロというフォーマットは、

やはり、その人の本姓がストレートに出てしまうというのはあるであろう。

 

オスカー・ピーターソンチック・コリアレイ・ブライアント

キース・ジャレットセロニアス・モンクミシェル・ペトルチアーニ

数々の偉大なピアニストが素晴らしいソロ作品を残しており、

それぞれが、やはり違う味があり、その人らしさを醸し出している。

 

エバンスのソロ作品には、逃げ場のない、

急き立てられるような、寂寥感とでも言おうか、

ある種、深い冷たさを、どうしても感じてしまう。

楽しげな明るい曲でさえ、痛々しさを感じる。

強いてあげれば、モンクのソロ作品における孤独感に近い。

ベクトルが内へ内へと向かうような、

透徹した、厳しさのある寂しさが充満している気がする。

 

晩年に出した、「アーロン・アゲイン」はもっと、痛々しい。

エバンスのソロを聴くと、

どれだけ弾いて、弾き続けても、いつまでたっても、精神的に充足されず、

絶えず、急き立てられるように、ピアノに向かわざるを得ない、

壮絶感さえ感じるのである。

そこまで自分を追い詰めなくとも、と言った感じ。

 

でもそこに残された壮絶な軌跡は、

やはり限りなく美しく、愛おしい。

聴けば聴くほど、その感が強まっていく。

 

Bill Evans(p)

1968.9.23,24,30, 10.8,14,21, NY

 

1  Here’s That Rainy Day

2  A Time For Love

3  Midnight Mood

4  On A Clear Day

5  Never Let Me Go

6  Medley: All The Things You Are / Midnight Mood

7  Time For Love (Alternate Take)

 

メドレーの冒頭、オール・ザ・シングス・ユー・アーの

畳み掛けるようなフレーズの積分に、たまらなく寂しさを感じてしまう。


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Taylor Eigsti テイラー・アイグスティ Tree Falls  

疾走し、加速する音楽

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冒頭の「Sparky」を聴いて、

久々に、EL&P(エマーソン・レイク&バーマー)に夢中になった、

若き頃の興奮を思い出した。

また、シンセサイザーを初めて手に入れ、打ち込みの練習を始めた頃を思い出した。

(楽器のデモ演奏で、必ずこのようなタイプの音楽が収録されていたなぁ)

躊躇なく、疾走し、加速する音楽。

迸るエネルギーを、溢れ出るままに表現した潔さと勢いを感じる音楽。

 

中高年のリスナーにとっては、少々体力がいって、辛いものがあるかもしれないが、

そういう時は、自分が演奏しているつもりで聴くと意外とノレるものである。

たまには、こういう音楽を聴いて若返るのも良いと思う。

サウダージ的なものばかり求めていた、最近の私を鼓舞してくれる。

 

テイラー・アイグスティの11年振り新作ということらしいが、

今作のような、大層な絵巻物を完成できる才能にまず、敬意を表したい。

ストリングスや多様なボーカルも取り入れ、

テイラーの幅広い音楽素養とポビュラリティ、

非常に現代的でありながら、懐かしさも感じるような不思議な出来となっている。

 

私的には、7曲目のグレッチェン・パーラトのボーカルがフューチャーされた

「 Listen In 」が素晴らしい。

どこか懐かしく優しさの溢れた曲想で、テイラーの本質を垣間見れる。

 

aylor Eigsti – piano, keyboards
Becca Stevens – vocal, charango
Casey Abrams – vocal
Gretchen Parlato – vocal
Charles Altura – guitar
David Ginyard – bass
Eric Harland – drums
Ben Wendel – sax, bassoon
Sam Sadigursky – flute, clarinet
Nathan Schram – viola
Emilie-Anne Gendron – violin
Hamilton Berry – cello

 

1. Sparky (feat. Ben Wendel)
2. Skylark
3. Hutcheonite
4. Play With Me (feat. Gretchen Parlato)
5. Tree Falls
6. Rainbows
7. Listen In (feat. Gretchen Parlato)
8. Accidentally (feat. Gretchen Parlato & Becca Stevens)
9. Bandwiches
10. Plane Over Kansas
11. Tree Fell
12. The DJ Situation

 

レッチェン・パーラトのボーカルがフューチャーされた「 Listen In 」


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Terumasa Hino 日野皓正 PYRAMID

ヒノテルのフトコロ

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ヒノテルこと日野皓正。

学生時代、一度だけ、共演できるチャンスを奇跡的にいただき、

その圧倒的な存在感、全体を掌握するカリスマ性、

包容力のあるサウンドとフレーズに、圧倒されたことをよく覚えている。

 

このアルバムは、その頃、購入して本当によく聴いた。

ヒノテルが制作した数々の作品の中で、

勿論ストレートアヘッドなジャズを熱く吹き上げる作品群も素晴らしいが、

自分としては、本作の他、「シティ・コネクション」、「ニューヨーク・タイムス」、

さらには、意欲作「ダブル・レインボー」といった、フュージョン作品に

より思い入れがある。

 

これらの作品は、ニューヨークの一流のミュージシャンをフューチャーした、

お金のかかった贅沢な作品群であり、ある意味バブリーな匂いがするのであるが、

ヒノテルが一番輝いていた時期だと思うのである。

そして、それが単に商業的な側面を超えた、

世界に通用するヒノテルの天賦の才能と「懐の深さ」を示し得たものだと信じている。

当時のスイングジャーナル誌でのパット・メセニー へのインタビュー記事で、

ヒノテルの「ダフル・レインボー」をよく聴いているといったような発言が

掲載されていたような記憶があるが、当時のニューヨークのジャズシーンにおいて、

ヒノテルは注目される存在だったのである。

 

このアルバム「ピラミッド」は、そう言ったヒノテルの輝かしき時代の、

頂点ともいうべき作品である。

特に聴きどころは、ケニー・カークランドの素晴らしさ。

カークランドのポップな感覚と劇的な構成力が、

ヒノテルの先鋭的なトランペットのサウンド

絶妙なフィーリングで溶け合っている。

同時期にウイントン・マルサリスのハウス・ピアニストとしても、

活躍していたカークランドだが、

どうも、ヒノテルのグループで参加しているカークランドを聴いて、

ウィントンは自分のグループに採用したようである。

その後、ケニーカークランドは、ミロスラフ・ビトウスやエルビン・ジョーンズ

ジョン・スコフィールドマイケル・ブレッカー、ケニー・ギャレットといった

巨匠との経験を積み、メイン・ストリームジャズにおけるジャズピアニストとして、

一世を風靡していったのである。

 

Terumasa Hino/ cornet,flugelhorn
Kenny Kirkland/ kb
Lou Volpe/ eg
Tom Barney/ eb
Richie Morales/ ds
Manolo Badrena/perc
David Sanborn/ as
Don Alias/ perc
Suiho Tosha/ Noh
Bue Alan Rubin/ tp
Lew Soloff/ tp
David Taylor/ bass-tb
Joe Randazzo/ bass-tb
Jerry Dodgion/ as
Dennis Morouse/ ts
Ronnie Cuber/ bs

Recorded at Record Plant Studios, NYC in June, July, 1982

 

1. PYRAMID

2. ESTATE

3. THINK ABOUT IT

4. SILENT SLOPE

5. T FUNK

6. SUNFIEDS

 

7. IGOR’S HIDEAWAY

8. ARCADIA

 


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