JAZZ遊戯三昧

オススメのジャズアルバムを紹介してます。

Melissa Aldana メリッサ・アルダナ 12 Stars

メリッサ・アルダナのブルーノートデビュー作

 

メリッサ・アルダナの技量と可能性を知ることのできる傑作である。

インプロバイザーとしての技量も素晴らしいが、

音楽全体の構成、展開力を備えたオーガナイザーとしての可能性感を感じる。

 

演奏にも参加している、ギターのラージ・ルンドの

プロデュースという点も興味深い。

全体的に、瞑想的、思索的なトーンで、内へ内へと向かうような感覚、

深い深い沼に、徐々に沈み込んでいくような印象は、

ラージとメリッサの内向的な、共鳴する感覚なのかもしれない。

4.曲目の「Emilia」などは、

とても穏やかだが、危ういダークネスを宿していて、気味が悪いほどだ。

 

彼女の生き様や想いをアイコン的にデザインしたジャケットも秀逸で、

このアルバムに賭けた彼女の強い思いを感じる。

 

こういう音楽を聴いていると、創造力を掻き立てられる。

感情の趣くままにと言うのではなく、慎重に言葉を選んで、

極めて抑制的に、様式美をめざし、表現に向かう姿勢に、

改めて触発されるのである。

 

 

Melissa Aldana(Ts)

Sullivan Fortner(Key)

Pablo Menares(Bass)

Kush Abadey(Ds)

Lage Lund(Gt)

 

1. Falling
2. Intuition
3. Intro to Emilia
4. Emilia
5. The Bluest Eye
6. The Fool
7. Los Ojos de Chile
8. 12 Stars

 


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Chick Corea And Gary Burton チック・コリア&ケーリー・バートン In Concert, Zurich,

青春の熱くも儚い、思い出

この豪奢な感じの2枚組のレコードを買った時の興奮は、

今でもよく覚えている。

そして、また、針を落として、スピーカーから流れる、

二人の一糸乱れぬ、緊張感のある完璧なデュオ・プレイを聴いて、

心から打ち震えたものだ。

 

当時高校2年生だった僕は、何を思ったか、このLPを聴いて、

ある決意を固めた。

当時、それほど話したこともない、憧れの女の子に告白しようと。

それも、ラブレターを添えて、「このLP聴いてみて」と、

勇気を振り絞って、彼女に渡したのである。

 

僕には、確信があった。

それほど、このLPには、当時の僕の心を鼓舞し、勇気づけ、

必ず願いが叶うという、自信と勇気を与えてくれた。

「きっと、これを聴いてくれれば、僕の気持ちは伝わり、満願成就!」

 

彼女は、手紙とLPを一旦受け取ってくれ、

返事を後で聞かせてくれることになった(と記憶している)。

その夜、今頃、LPを聴いて、彼女の心は感動に打ち震えているだろうと、

勝手な想像を膨らまし、眠れぬ一夜を過ごした。

 

翌日、LPの収まったビニールケースを手に、

「これ、ありがとう。私付き合っている先輩がいるの、ごめんなさい」

と言って、LPを返されたのである。

「あ、はい。わかりました」と僕は言ったような気がする。

 

僕が悲しかったのは、既に付き合っている人がいて、フラれたという事実よりも、

LPを聴いた感想や印象を何も語ってくれなかったことにあった。

 

今から、考えてみれば、高校生の女の子にジャズなんか聴かせても、

殆どの子は、響かないのは、当たり前なのだが、

当時の僕は、このLPの音楽の魔力を、信じ切っていたのである。

それほど、このLPは、私にとって、説得力と高揚感が備わった

ライブアルバムであり、青春の熱くも儚い思い出そのものなのである。

 

特に「Tweak」を聴くと、今でも切なくなってしまう・・・・。

 

 

Chick Corea(p),

Gary Burton(vib)

 

Senor Mouse 9:53

Bud Powell 8:30

Crystal Silence 11:53

Tweak 5:59

Falling Grace 5:05

Mirror, Mirror 5:28

Song To Gayle 6:59

Endless Trouble, Endless Pleasure 4:49


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魚返 明未 & 井上 銘

心に沁みる音色

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おがえりあみ と いのうえめい

 

名前もいいが、音楽もいい。

井上銘のギターの魅力は、かねがね、書き留めておきたかったのであるが、

このアルバムを聴いて、いてもたってもいられなくなった。

 

やはり、彼のギターの音色である。

非常にシンプルでありながら、艶があって、奥行きが深くて、心に沁みてくる。

そして、時にハートに突き刺さるような鋭利さも・・・・

言葉では伝えにくいのだが、

やはり色で言えば、ブルーであり、孤高であり、切なさがある。

一瞬にして、私の心を捉えてしまう説得力のある音である。

 

彼の心と、楽器であるギターが一体化しているようにも感ずる。

ギターを通して、生身の彼の「生」が剥き出しにされているような気がする。

身を削って演奏しているような、ある意味ヒリヒリした痛々しささえ、

感じてしまう演奏。

ときに、自分の心に迫ってくる音楽というものは、

えてして、そうした、痛々しくも、切ない感覚を有している。

ロリンズ、コルトレーンキース・ジャレットエバンス、、、、、

 

デュオというフォーマットだけに、

井上のピュアなエレメントが、より直に伝わってくる。

大切に聴き続けたいアルバムがまた一つ増えた。

 

魚返 明未 (p)
井上 銘 (g)

 

1. きこえない波
2. サイクリングロード
3. もず
4. かなしい青空
5. 丘の彼方
6. 隔たり
7. Herbie Westerman
8. 縮む
9. 静かな影

 


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Sonny Stitt  ソニー・スティット  Sits in with the Oscar Peterson Trio

サイドマンとしてのピーターソンの凄み

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それにしても地味なジャケット。

なんちゅう安易なデザイン!

それに反して、演奏はとてもエキサイティングで、思わず聴き惚れてしまう。

 

スティットが、アルト、テナーを使い分け、

本気度の高いブローが、絶好調なのは言うまでもないが、

私の関心は、サイドマンの時にこそ、ピアニストとしての真価がよくわかる、

ピーターソンのピアノにある。

何度聴いても、惚れ惚れしてしまう。

イントロの繰出し方、伴奏時のコンピング、合いの手、

コンパクトに詰まった粋なわかりやすいソロ、そして華麗なエンディング。

ピアノと言う楽器の持つ、オールマイティさ、魅力を十分に知り尽くし、

発揮させることのできる、稀有なアーティストの一人である。

 

ノリノリの2曲目「Au Privave」を聴くと、

これでもかと、グルーブ感をどんどん加速していく、ピーターソンの妙技は、

サイドマンという立ち位置で、尺が限られた制限があるからこそ、

引き立つと思われるのである。

「もっと弾きまくりたいんだけど、この辺にしといてやろうか」

というような感じ。

「もっと聴いていたいんだけど、名残惜しい」

というような感じ。

 

基本に立ち返って、こう言う演奏を、よく吟味したり、分析したりしてみるのも、

ジャズ音楽の楽しみのひとつである。

 

SONNY STITTE (as,ts)
OSCAR PETERSON (p)
RAY BROWN (b)
ED THIGPEN (ds)

Recorded May,18,1959 in Paris

 

1 I Can't Give You Anything But Love

2 Au Privave

3 The Gypsy

4 I'll Remember April

5 Scrapple From The Apple

6 Moten Swing

7 Blues For Pres,Sweets,Ben And All The Other Funky Ones

8 Easy Does It


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Manuel Linhares マヌエル・リニャレス Suspenso

ラージ・アンサンブルの魅力

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また、素晴らしいミナス・サウンドに出会った。

アントニオ・ロウレイロのプロデュースだけあって、期待が高まったが、

期待以上の素晴らしいアルバムに仕上がっている。

冒頭曲のMarcha Lenta を聴いただけでも、背筋に戦慄が走る。

 

この数年、ミナス・サウンドの持つ奥行きの深さに、

心惹かれる機会が増えてきたような気がする。

昔から、ミルトン・ナシメントトニーニョ・オルタなどはもとより、

ウェイン・ショーターパット・メセニーやギル・ゴールドスタインなど、

ミナス・サウンドから少なからず影響を受けてきたジャズ・アーティストを

通じて、聴き親しんできたのではあるが、

きっかけは、マリア・シュナイダーの音楽か。

マリア・シュナイダーの「The Thompson Fields」などを聴くと、

彼女の考えるラージ・アンサンブルの源泉は、このミナス・サウンド

あるのではないかと思うほど、感性的に近いものを感じる。

 

ラージ・アンサンブルの手法を取り入れることで、

ミナス・サウンドが本来持っている深淵な多血のクロスオーバー的な本質に、

広がりと緻密さを与え、輝きを増しているような気がする。

なんと表現したら良いのだろうか、

土着の匂いがプンプンしながらも、とても室内楽的で洗練されているというか・・・

 

不思議、謎、トリック、神話がいっぱい詰まった宝箱を、そっと開けて、

ジャズ・テイストのラージ・アンサンブルで程よくエッジを利かせ、

風に乗って、空高く解き放つような音楽性・・・・とでも言おうか。

いささか詩的に過ぎるかもしれないけど、

このなんとも言えない開放感あふれる音楽の魅力をなんとかしてお伝えしたい。

 


1. Marcha Lenta (05:35)

2.Intempérie (04:48)

3. Isolation 4 (06:23)

4. Oxigénio (04:40)

5. Lamento (07:19)

6. Jogo de Sombras (05:33)

7. Sentimental Illness (05:20)

8. Dan?a Macabra (06:02)

9. Suspended (05:35)

 

Manuel Linhares – vocals, compositon, lyrics
António Loureiro – arrangement, music production, synthesizers, electric bass (1),   composition (4), drums
Guillermo Klein – arrangement (6)
Paulo Barros – piano
José Carlos Barbosa – bass
David Binney – alto saxophone
Frederico Heliodoro – electric bass (2)
Rubinho Antunes – trumpet, flughelhorn
Alexandre Andrés – flute
Hugo Raro – Fender Rhodes
João Pedro Brandão – alto saxophone
Rui Teixeira – baritone saxophone
José Pedro Coelho – tenor saxophone
Hugo Ciríaco – tenor saxophone
Andreia Santos – trombone
Daniel Dias – trombone

Coreto Porta Jazz :
Hugo Raro – piano
AP – guitar
José Carlos Barbosa – bass
José Marrucho – drums
João Pedro Brandão – alto saxophone
José Pedro Coelho – tenor saxophone
Hugo Ciríaco – tenor saxophone
Rui Teixeira – baritone saxophone
Susana Santos Silva – trumpet
Ricardo Formoso – flugelhorn
Andreia Santos – trombone
Daniel Dias – trombone

 


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Kit Downes キット・ダウナーズ Vermillion

美しいピアノトリオが、またひとつ

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  • 初物である。

  •  

  • キット・ダウンズというイギリスのピアニスト。

  • 北欧やイタリアなど、本当に多くの耽美的なアプローチのピアニストが、

  • 数多いて、少々、辟易としている状況の中、

  • 背筋の通った、硬質で、三者インタープレイが構造的で、奥ゆかしい、

  • 抑制の効いた、素晴らしいピアノトリオが登場した。

  •  

  • 全体的な印象として、まさしくECMの音にはなっているのだが、

  • なんというか、独りよがりのマスターベーションではなく、

  • 非常に建築的というか、構成的な見取り図の制限の上に、

  • 伸びやかに室内楽的に対話する構図がなんとも深淵で、魅力的。

  • キット・ダウンズのピアノ自体も、これまで聴いたことのない、

  • 新鮮なフレージングやハーモニーを利かせ、

  • 新しいピアノトリオの匂いを感じさせてくれる。

  •  

  • また、これから活躍が楽しみなユニットが誕生した。

     

  • Kit Downes(p)
    Petter Eldh(double-b)
    James Maddren(ds) 


  • 1.
    Minus Monks
  • 2.Sister, Sister
  • 3.Seceda
  • 4.Plus Puls
  • 5.Rolling Thunder
  • 6.Sandilands
  • 7.Waders
  • 8.Class Fails
  • 9.Bobbl’s Song
  • 10.Math Amager
  • 11.Castles Made of Sand  
  •  

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SCOTT HAMILTON  スコット・ハミルトン  LIVE IN BERN

「歌う」ことの難しさ

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スコット・ハミルトンを聴くと、いつも感じるのは、
「よく歌ってるなあ」ということ。
これから、ボーカルを志す人は、
この人のソロをこそ、勉強すればいいのにと思う。

スコット・ハミルトンの、ほぼ予定調和で、流麗なソロが流れてくると、
思わず、サウナの後の水風呂みたいに、
体中に心地良さが沁みわたってくるような気分になる。
その語り口は、大らかで伸びやか、
わかりやすくて、なじみやすい。

思わず、彼がソロに入ると、ニンマリしてしまう。
その奇を衒わないアプローチは、ストレートで明快。
スリルやドキドキ感は薄いかもしれない。
でも、何か、心にさざ波が打ち寄せるような不思議な魅力を備えている。

言うまでもないことだが、スタンダートをよく解釈して、
歌い上げるということは、簡単なようで簡単ではない。
なかなかできる芸当ではない。
生まれ持ってのセンスもさることながら、
厳しい鍛錬、探求といった向上心がなければ培われるものではない

偉大なインプロバイザーに共通する2つの特徴として、
・タイム感覚が際立って優れている(リズム感に優れ、「共振力=リズム伝振性」が高い)
・曲全体の構成、展開を深く理解、追求している(「物語性」が高い)
ことが挙げられると思う。
どんなにテクニカルに上手くても、
このタイム感覚と物語性が劣っていると、説得力に欠けるものになってしまう。

「歌う」ことの大切さ、と簡単に言ってしまうけれど、
「歌える」ようになるためには、天性の素質もあると思うが、
相当な覚悟をもって練習し、探求を続け、常に想像力を豊かに働かせなければ、
本当に「歌う」ことなど、できないのかもしれない。
スコット・ハミルトンのブローを聴くたびに、そう思ってしまう。

繰り返しになるが、
「思わずニンマリ」して聴き惚れてしまうアーティストというのは
私もそれほど多くはないのであるが、
スコット・ハミルトンを聴くと、いつも余計にニンマリしてしまうのである。

 

Scott Hamilton(tenor saxophone)
Tamir Hendelman(piano)
Christoph Luty(bass)
Jeff Hamilton(drums)

 

1. September In The Rain
2. All Through The Night
3. Watch What Happens
4. Soul Eyes
5. This Can't Be Love
6. There'll Be Some Changes Made
7. Sybille's Day
8. Key Largo
9. Woody'n You
10. The Champ
11. Ballad For Very Tired And Very Sad Lotus Eaters
12. You And The Night And The Music
13. Centerpiece

 


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