奥の深いカート 〜魅力尽きることなく〜
やはり、カートのギターは深いなあ〜
年末に、これまた心揺さぶられるアルバムに出会うことができた。
心囚われ、没入感半端ない、今年のベストアルバムの一つである。
録音されたのは2012年というから、10年以上も前の音源。
録音後、ジェリはスタジオ・アルバムの制作を熱望していたという。
願いは叶わず、5年後の2017年に60歳の若さで、
亡くなってしまったジェリ・アレン。
ピアノはこう弾くんだという、他のピアニストとは一線を画した、
ジェリ・アレンの主張性の強い、独特で、鮮鋭なピアノタッチには、
いつも畏敬の念を抱いてきたが、
このカートとのデュオによるジェリのピアノは、なんというか、
非常に深遠で、ドリーミーで、
明らかに、カートに触発されて、夢心地で弾いている姿が思い浮かぶ。
優れたアーティスト、あるいは心酔しているアーティストと共演したときに、
喜びとイマジナリーが湧き出て、いつもとは違う自分のインプロビゼーションが
導き出されていくような経験は、私にもあるが、
まさに、このアルバムには、二人のなんとも素晴らしい相互作用によって、
新たな次元の結晶を生み出すことに成功している。
ジェリが再度、アルバム制作を強く望んだこともよくわかる気がする。
冒頭のビリー・ストレいホーンのラブソングの美しいことといったら。
カートもいつものエキセントリックな側面は抑えられて、
より叙情的で悲しげなフレーズとタッチが、きらびやかなジェリのピアノと交歓して、
本当によく歌っているのである。
カートの深遠さを再確認することができた。
現代版、ジム・ホールとビル・エバンスのインターモデュレーションと言いたい。
Kurt Rosenwinkel: Guitar
Geri: Allen: Piano
1. A Flower is a Lovesome Thing
2. Embraceable You
3. Introductions (Geri Allen)
4. Simple #2
5. Ruby My Dear
6. Introductions (Kurt Rosenwinkel)
7. Open-Handed Reach
二人の一期一会の奇跡をお聴きください。