この至福の心地よさはなんだろう
デュオと言いながら、アギーレがピアノだけでなく、ベースやパーッカッション、
管楽器など、多彩な楽器を駆使して、心地よいアンサンブルを創り出している。
そして、今回の収穫は、何と言っても、ヨタムのギター。
初めて聴くギタリストであったが、ギターの音色や佇まいに、
透明感と浮遊感があり、アギーレが創り出す、
南米の自然を想起させるナチュラルでそよ風のように心地よいサウンドに、
実にうまくマッチしている。
全編、夢こごちのような曲想が繰り広げられ、なんとも心地よい。
この心地よさは、いったい、なんであろう。
タンゴの国、アルゼンチンには行ったことがないけれど、
季節も反対の日本の真裏に位置しているこの国の、
壮大で、多様な自然が生み出す風土から生まれる包容力なのか、
土着性とヨーロッパ文化との融合から生まれた独自性なのか、
よくわからないが、ブラジル音楽ではなく、やはりアルゼンチンの音楽という
ことは強く感じる。
アルゼンチンには、都市部の洗練された白人系のヨーロッパ文化と、
牛とともに放浪する地方のガウチョの文化の両面があり、
土着と洗練の融合が独特な魅力を生み出しているのではないかと思うのである。
アギーレの音楽は、そうしたアルゼンチンの自然と文化に育まれた、
素直で郷土愛に満ちたものであるが、やはりそこに、
非常に、現代的な第三の媒介項として、ジャズ音楽の高度に洗練されたセンスを
うまく取り入れていると思うのである。
いつまでも聴いていたい爽やかさと、
聴く度に増す味わいの深さを兼ね添えた
素晴らしいアルバムです。
Carlos Aguirre –
piano, Rhodes, accordion, synthesizer, guitarrón, fretless bass, electric bass,
bass flute, percussion, voice
Yotam Silberstein –
electric guitar, classical guitar, voice
1 Fairytale (Silberstein)
2 Nuevos viejos amigos (Aguirre)
3 João (Silberstein)
4 En el jardín (Aguirre)
5 Ga'aguim (Silberstein)
6 Paisaje imaginario (Aguirre)
7 Madrugada (Silberstein)
8 Tanto para agradecer (a Ivan Lins) (Aguirre)
08 Tanto para agradecer (Carlos Aguirre)