JAZZ遊戯三昧

オススメのジャズアルバムを紹介してます。

ICHIKO HASHIMOTO 橋本一子 VIEW

いやらしさ と 純粋さと

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黙って聴けと言われているようである。

言われた通り、黙って聞いた。いや、黙ってしまった。

 

彼女のキャリア、メンバーの人選、選曲、エフェクト、嗜好、ピアニズム、

ノスタルジーと現代性、いろいろなエレメントが、演奏の中に交錯し、複層し、

様々な表情を見せている。

 

橋本一子

純粋で傷つきやすく、脆い側面と、

斜に構えた、現実的でいやらしく、したたかな審美眼が、

良い塩梅で同居している。

 

彼女のピアニズムは、元々、昔から、露骨なアンビエントなテイストが、

少し鼻について、敬遠気味ではあったのだが、

時を経て、この作品での、達観したような正直で朴訥とした彼女の吐露は、

他のメンバーとの触発によって、実に熟成した「音楽」に成就している。

素晴らしい。

美しい。

聴き惚れました。

 

9曲目「danny boy」、

11曲目「 before and after the introduction」には

久しぶりに、震撼してしまいました。

 

橋本 一子 (p, vo)
菊地 成孔 (as)
類家 心平 (tp)
藤本 敦夫 (ds, b)
橋本 眞由己 (cho)

 

1. blue
2. view
3. all the things you are
4. blackbird

5. giant steps
6. beijo partido
7. my foolish heart
8. good girl
9. danny boy
10. planet
11. before and after the introduction

 


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Glenn Zaleski  グレン・ザレスキー  My Ideal

信頼できるピアノ

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「信頼できるピアノ」

というタイトルも変ではあるが、

グレン・ザレスキーのピアノを聴いていると、

ジャズピアノとは、「かくあるべき」という感想がいつも出てくる。

 

このスタンダードを中心に取り上げた、ザレスキーの初リーダー作は、

ジャズピアノを試みるものにとって、

リズム、フレーズ、ハーモニー、インタープレイのあり方などなど、

ジャズの伝統に培われた様々な味わいのあるイディオムや豊富なアイデア

勉強することができる最高の教材でもある。

それだけテクニック的にも、歌心的にも、

先人の偉大なアーティストの知恵をよく吸収し、精通しており、

また、アプローチの仕方が実に素直(ストレート・アヘッド)であり、安定感がある。

そして、斬新で現代的な響きも併せ持っている。

(ラストのラビ・コルトレーンをフューチャーしたI'm Old Fashionedの解釈など)

 

いささか、誉めすぎかも知れないが、

ザレスキーのピアノを聴くと、いつも、

なんて整った、考え抜かれた、スマートな演奏なんだろうと感心してしまう。

アーロン・パークスやジェラルド・クレイトンのスタンダードの解釈も

素晴らしく、流石だなぁと感心することが多いのだが、

ザレスキーのピアノは、この二人とは違って、なんと言ったら良いのであろう、

もっと、学究的な匂いがするとでも表現したいような、

渋く地味だが、何度も読み返して味わいたくなるような、

そして読み返すたびに、新たな発見がある座右の名書のような存在と

言ったら良いかも知れない。

 

ザレスキーは、多分、知る人ぞ知る存在であり、

表に出てブレークするようなアーティストではないと思う。

しかし、一人、ほくそ笑みながら、

その硬質で豊穣な、奥行きのある職人プレイを堪能できる喜びに浸り、

幸せを味わえる、稀有な存在の一人なのです。

 

Glenn Zaleski - piano
Dezron Douglas - bass
Craig Weinrib - drums
Ravi Coltrane - tenor saxophone (track 9)

 

1. Nobody Else But Me (Jerome Kern)
2. Waltz For MD (Rick Rosato)
3. Make Someone Happy (Jule Styne)
4. Cheryl (Charlie Parker)
5. Body and Soul (Johnny Green)
6. REL (Peter Schlamb)
7. Arietis (Freddie Hubbard)
8. My Ideal (Richard A.Whiting)
9. I'm Old Fashioned (Jerome Kern)

 


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Jeff Lorber Fusion  ジェフ・ローバー・フュージョン SPACE-TIME

我が身に沁みる、フュージョン

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最近、70、80年代のフュージョンを良く聴く。
やはり、ノスタルジーなんだろうか。
 
ただ、かつてのフュージョンの大御所たちが、
ニンマリとした顔でリリースする新作は、
聴く気がしないのも、また常になっている。
 
しかし、このアルバムをたまたま試聴して、
ジェフ・ローバー、昔と変わらず、キレッキレッで、シンプル・ストレートで、
相変わらず、カッコイイ!!  なんて洗練されているんだろ!!
思わず聴き惚れてしまいました。
なんと言っても、この人の最大の特徴は、ファンキーなこと。
ファンキー節が心に染みるのである。
 
私は、結構、節操なく、多種多様な趣向のアルバムを
このブログで紹介していますが、
いろんなジャンルの素晴らしい音楽を聴いてみたいという欲張りな性格なんです。
 
ただ、私のプロフィールでも述べているように、自分自身が
「いい音楽に巡り会うと、ニンマリする、身体が揺れる・打ち震える、幸せになる」
と感じるものしか、アップしていません。
人の趣味嗜好なんか、主観的なものですし、人によって異なるのは当然だし、
結局、音楽から受ける印象とか感動といったものは、
厳密にいえば、共有できるものではないと思います。
ただ、少しでもいいので、この感動を自分以外の誰かに伝えたいという気持ちも、
抑えられない自分があることも、否定できません。
 
私のプログは、そういう意味で
非常に主観的で感覚的、感情的な側面が、強いと思います。
本当は、もう少し客観的なデータや逸話や裏話を盛り込んで、
読んで参考になる内容を充実すべきなのかも知れないのですが、
あえて、自己満足かもしれませんが、こうして伝えたい気持ちを、
ストレートに文章として残していく作業を、
今後もできる限り続けて、まずは、自分自身が楽しんでいきたいと思います。
そして、ごくたまに共感コメントをいただければ、
こんな嬉しいことはありません。
 
Jeff Lorber: Keyboards and Synth Bass
Jimmy Haslip: Electric Bass
Gary Novak: Drums
David Mann: Horn Arrangement/Performance
Paul Jackson Jr.: Guitar and Guitar Solo
 
1. Space-Time (feat Bob Mintzer)
2. Back Room
4. Mind Reader (feat Bob Mintzer)
5. Memorex
6. Louisiana (feat Michael Landau)
7. Curiosity
8. Chick (feat Hubert Laws)
9. Day One (feat Michael Landau)
10. The Truth
11. Memorex Reprise
 
 
 

Keith Jarrett キース・ジャレット The Out-of-Towners

キースのピアノの音色の美しさについて

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なんといっても

キースのピアノは、

音色が美しい。

 

ピアノの音ががこんなに優しく、華麗で、時に限りなく憂いを帯びて・・・

ピアノの音色の美しさにハッとさせられることが多いのは、

やはり、キース・ジャレットである。

 

ピアノのダイナミズムを知り尽くした男なのであろう。

聞いたところによると、

鍵盤の打鍵の軽さなど、調律師による、かなり特徴的な調整が施されているようだが、

スタインウェイの硬質でありながら柔らかい、あのなんとも言えない音の魅力を

キースは十二分に引き出してくれる。

 

二曲目の「You’ve Changed」を聴いてみてください。

出だしから、少し篭った感のある表情をみせながらも極めて硬質でストイックな

礼儀正しい音を紡ぎ出している。

音の表情に深みがあるのである。

これは、楽器のポテンシャルと、

演者の演奏技術(いわゆるタッチやフィンガリング)の双方が、

見事に融合し、昇華した結果であろう。

 

ライブ映像を見ると、非常に力の入った指使いで、

よくあんな強張った指使いで、あんなに美しい音が出るものだと、

いつも感心してしまうが、

キースならではの魔法のタッチが紡ぎ出す音は、唯一無二で限りなく美しい。

 

キースのタッチや音のことばかり書いてきたが、

このアルバムは、この往年のトリオのライブ作品の中でも、

珠玉の出来であり、特にキースが素晴らしい。

数あるスタンダーズの作品群の中でも、ぜひお勧めしたいアルバムである。

 

 

PERSONNEL:

Recorded in Munich, ECM's hometown, in 2001

 

TRACKS:

  • 01. Intro - I Can’t Believe That You’re In Love With Me

  • 02. You’ve Changed

  • 03. I Love You

  • 04. The Out-of-Towners

  • 05. Five Brothers

  • 06. It’s All In The Game

Sachal Vasadani & Romain Collin  サシャル・ヴァサンダーニ&ローマン・コリン Midnight Shelter

ミッドナイト・シェルター

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タイトル通りの音楽がある。

「ミッドナイト・シェルター」

 

サシャル・ヴァサンダーニのヴォイスも

ローマン・コリンのピアノの音色も

地下室のシェルターから漏れ聴こえてくるような、

内省的であるが、親密で穏やかな空気感を湛えている。

 

こんな音楽ばかり聴いていたら、

何もかも、やる気をなくしてしまう気もするが、

忙しい日常の中で、ふと、自分を省みるときに、

スッーと心に入り込んてくる、心地よい滑らかと優しさがある。

 

ローマン・コリンは、グレゴア・マレの「アメリカーナ」で、知ったピアニストだが、

サシャル・ヴァサンダーニは初めて聴いた。実に味わいの深い声の持ち主。

アルバムの紹介記事を見ると、二人とも素晴らしい才能と経験の持ち主であり、

様々な音楽上の活動の中で、一つのベクトルとして、

コロナ渦という時勢に合った、

このようなセンシティブなアルバムを世に出したことは、

非常に彼らのポテンシャルを感じる。

今後、注目していきたいアーティストである。

 

Sachal Vasandani Voice

Romain Collin Piano

 

1.Summer No School
2.Before You Go
3.Adore You
4.River Man
5.Great Ocean Road
6.Throw It Away
7.Don't Think Twice, It's All Right
8.Love Away
9.Blackbird
10.Dance Cadaverous
11.One Last Try

この曲お気に入りです! Summer No School


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ニック・ドレイクのRiver Man


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Marcos Valle & Stacey Kent  マルコス・ヴァーリ&ステイシー・ケント Ao Vivo

やはり手が伸びる

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マルコス、人妻のステイシーに手が伸びてるし、

自分も、なんやかんや言って、ステイシーのアルバムに手が伸びる。

 

なんてゴージャスで、軽妙洒脱な音楽なんでしょう。

音楽で、交歓し合う二人の成熟したやりとりが、伝わってきます。

ライブなのに、この完成度!

 

ステイシー・ケントの歌声や佇まいは、

やはり、他の歌手に見られない、特別な何かがある。

このライブを聴いて、改めてステイシー・ケントの素晴らしさを再認識した。

シルキーで、キュートで、どこか翳りがあって・・・

何度も日本に来ているが、一度も生で聴いたことがない。

コロナが収まったら、ぜひ、聴いてみたいアーティストの一人である。

 

YouTubeでこの二人の別の、クオリティの高いライブ映像もみられるが、

マルコスのステイシーに送る視線が官能的で、

旦那のジム・トムリンソンがヤキモキしないか、いらない心配をする。

それだけ、この二人の会話は、息があっていて、艶かしい。

 

マルコス・ヴァーリの芸歴長いだけじゃない、底力を感じさせてくれる、

素晴らしいライブアルバムをぜひご堪能ください。

 

PERSONNEL:

  • MARCOS VALLE, piano, vocals

  • STACEY KENT, vocals

  • JIM TOMLINDON, tenor sax

SIDE A:

  • 01. The White Puma (Puma Branco)

  • 02. Look Who's Mine (Dia Da Vitória)

  • 03. The Face I Love (Seu Encanto)

  • 04. The Answer (A Resposta)

SIDE B:

  • 01. Drift Away

  • 02.Summer Samba (Samba De Verão)

  • 03. Gente

  • 04. Passa Por Mim

SIDE C:

  • 01. Batucada Surgiu

  • 02. La Petite Valse

  • 03. If You Went Away (Preciso Aprender A Ser Só)

SIDE D:

  • 01. Pigmalião 70

  • 02. The Crickets (Os Grilos)

  • 03. She Told Me, She Told Me (Sonho De Lugar)

  • 04. My Nightingale


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Charles Lloyd & the Marvels チャールス・ロイド&ザ・マーヴェルス Tone Poem

ロイドは飛んでいく

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やっと全編聴いた。

オーネット・コールマンの2曲からスタートをしていることからして、

本アルバムの大らかさと自由を象徴しているし、

ロイドの調子の良さ、本気度が窺える。

 

今になって、本当に自由に飛翔している感じがする。

元々ビル・フリーゼルのサウンドは、

ロイドが創作するストーリーに、最適な解を与え得る、

エレメントを持っている。

 

ロン・マイルスの 「Rainbow Sighn」の時も感じたけれど、

メンバーの対話のあり様が、実に素晴らしい。

「それぞれが硬質で折り目正しく、他者を敬い、傷つけない」のである。

フリーゼルが入るだけで、そう言う空間が醸成されてしまうのかもしれない。

 

そして何よりもまして、

ヒップに、軽やかに、飛翔するロイドのテナーは、

もはや遊戯三昧の境地である。

有り難や、有り難や。

 

こう言う音楽を聴くと、もうこれだけでいいと思ってしまう。

(良い作品に出会うと、その度にそう言っているが・・・)

 

Charles Lloyd (tenor saxophone ,alto flute)
Bill Frisell (guitar)
Greg Leisz (steel guitar)
Reuben Rogers (bass)
Eric Harland (drums)

 

1 Peace (Ornette Coleman)
2 Ramblin’ (Ornette Coleman)
3 Anthem (Leonard Cohen)
4 Dismal Swamp (Charles Lloyd)
5 Tone Poem (Charles Lloyd)
6 Monk’s Mood (Thelonious Monk)
7 Ay Amor (Villa Fernandez Ignacio Jacinto)
8 Lady Gabore (Gabor Szabo)
9 Prayer (Charles Lloyd)

 

タイトル曲 Tone Poem    白眉の演奏です。


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