JAZZ遊戯三昧

オススメのジャズアルバムを紹介してます。

Bill Evans & Jim Hall ビル・エバンス&ジム・ホール Undercurrent

二人だからこそ通用する語法の美学

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この二人の会話は、

長年、寄り添った夫婦の阿吽の呼吸といった感じというよりも、

互いに信頼し、敬いながらも、久しぶりの再会で、

緊張感と適度な距離感をもって、

カウンターに並んで座って会話を楽しむ

旧知の二人の間のやり取りとでも表現したらよいのであろうか。

集中して聴いていると、                            

二人の会話をカウンターの端で盗み聞きしている感覚に陥る

それだけ、この二人だからこそ通用する語法の美学に、

ある意味、嫉妬さえ感じる。

誰にも干渉できない緊密なインタープレイがここにある。

これは、私の持論であるが、「デュオ」という形式は、              

即興音楽のなかで、関係性が一対一ということもあり、              

レスポンスの瞬発性や研ぎ澄まされたバランス感覚が、生々しく露見されやすく、  

アーティストとしての真価が端的に問われる形式だと思うのです。

 

特に、ギターとピアノとのデュオについては、

対等なスタンスでインタープレイを繰り広げるのは、結構難しい作業であり、

どちらかがリードして進める形か、単純にソロと伴奏を交互に入れ替わるといった

アプローチがほとんどなのではないであろうか。

しかし、この作品は、明らかに両方が主役であり、常に相互作用的である。

互いに、瞬時に呼応して、紡ぎ出されていく即興の様は、

きまぐれで、安易なセッションのような風合いは微塵もなく、

まるで、あらかじめ譜面上で推敲されたと思われるほど、

端正で、奥ゆかしく、驚くほど息のぴったり合った、しかも挑発的な、

「奇跡」としか言いようのない出来なのである。

 

私にとって、聴くたびに新鮮で、没入感が強くなっていく作品であり、

このアルバムを聴いていない方には、是非、手に入れていただき、

BGM的で良いので、何度も何度も聴いてみてください。

きっと、このアルバムの深淵なる美学に、感じ入ることになるでしょう。

 

Guitar – Jim Hall
Piano – Bill Evans

 

1. My Funny Valentine
2. I Hear A Rhapsody
3. Dream Gypsy
4. Romain
5. Skating In Central Park
6. Darn That Dream

 


Bill Evans and Jim Hall Duo - Skating in Central Park