ピアノトリオ 〜美の結晶〜
余りにも美しすぎるピアノトリオ。
センシティブで、クール、聴く度に、深遠なるトリオミュージックの
真髄に嵌っていく。そんな素晴らしいアルバム。
何が素晴らしいのか、稚拙な分析ながら、整理してみたい。
1 ピアノのダイナミズムを知り尽くした音
マルチン・ヴァシレフスキは、ピアノという楽器が持つダイナミズムを最大限に
活かせることのできる稀有なピアニストである。その音像、タッチ、陰影、響き、
ハーモニーは、ピアノの魅力を知り尽くし、コントロールできる技量がなければ、
生み出せるものではない。
2 ピアニズムを引き立てるベースとドラム
これは、私の思い入れかも知れない。
トリオとしての三者の関係性は対等であるのかも知れないが、あくまでこのトリオ
は、ピアノを主役にした音像をいかに美しく表現できるかということに主眼が置か
れ、そのためには、ベースとドラムがどのようにアプローチしたらよいのかを、徹
底的に、緻密に考えられているところに、最大の魅力があると思う。
三者が個々に主張、自立しているというより、明らかに、ピアノにとって的解なサ
ポートとは何かを、考え尽くしている気がするのである。
3 フォーク・ロックテイスト
東欧・北欧系のリリシズムと言ってしまえば、元も子もないような気がする。
確かにマルチン・ヴァシレフスキの創り出すメロディは、極めてリリカルで、クラ
シカルな美しさに裏付けられているのは確かなのだが、何か、ロックやフォークの
懐かしいテイストを感じるのである。
ある意味ライル・メイズに近い存在と言って良いのかも知れない。非常にドラマ
チックでロマンティックな曲作り。そうしたバックボーンがベースにありつつ、
ジャズインプロバイザーとしての技量も相当なもので、非常に分かりやすく、ジャ
ズの魅力を伝えているところが素晴らしい。
ため息が出るような、美の結晶。宝石箱のような作品を開けてみませんか。
Marcin Wasilewski : piano
Slawomir Kurkiewicz : double-bass
Michal Miskiewicz : drums
ECM 1891 (2004)
1.Trio Conversation (Introduction)
2.Hyperballad
3.Roxane’s Song
4.K.T.C.
5.Plaza Real
6.Shine
7.Green Sky
8.Sister’s Song
9.Drum Kick
10.Free-bop
11.Free Combination For Three Instruments
12.Entropy
13.Trio Conversation (The End)
次の動画は、本アルバムではなくSimple Acoustic Trio (同じメンバー)名義の名盤「Habana」からの1曲ですが、このトリオの本質がよく分かる演奏のひとつです。