セシル・テイラーという革新
セシル・テイラーは、2013年、
「ピアノによる即興演奏の可能性を極限まで追求した革新的なジャズ・ミュージシャ
ン」として第29回(2013)京都賞思想・芸術部門を受賞している。
この賞は、「先端技術部門」「基礎・科学部門」「思想・芸術部門」の3部門があり、
各部門から1名ずつ選ばれるのだが、日本発の最も権威ある国際賞である。
過去、音楽の分野からは、ブーレーズやジョン・ケージ、メシアンなど錚々たる
アーティストが名を連ねているが、ジャズ界からはセシル・テイラーだけである。
まあ、そんな権威的な賞のことは抜きにしても、
自分が学生時代、フリー・ジャズこそ我が命としていた一時期、傾倒していた一枚。
1973年5月29日イイノ・ホールでの録音された本作は、
ピアノという楽器のダイナミズムとセシルの冷静な音楽構成力を十分に
味わうことのできる、傑作である。
大学の軽音の地下にある練習場で、先輩に隠れて、ベースを弾く友達と、
オトオドしながらも「フリージャズ演ろうぜ」とセッションした日を思い出す。
何も知らないくせに、とにかくフリージャズという言葉の持つ魅力だけで、
何も考えずに、ピアノを弾きまくって、一人悦に入っていたわけで、案の定、
当時のカセットでの録音を聴くと、完全に自己満足で、聴くに堪えない。
セシル・テイラーの音楽は、確かに革新的な即興演奏の手法を開拓したわけだが、
即興でありながら、しっかり伝統に根ざし、計算し推敲された構成があるからこそ、
作品として、完成度が高く訴求力を持っているのだと思う。
↑音符ではなくアルファベットのみを記した自筆の譜面。
1. コーラル・オブ・ヴォイス (エリージョン)
2. ロノ
3. アサック・イン・アメ
4. インデント