JAZZ遊戯三昧

オススメのジャズアルバムを紹介してます。

Barry Harris  バリー・ハリス plays tadd dameron

形式美の凄み

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バリー・ハリスである。

形式美の権化のような人である。

バリー・ハリスメソッドの洗練さは、強靭で、揺るぎない。

 

「こういう風にしか弾いたらあかんのっ!」

という頑固で、厳しい、ハリスのメソッドを習得しておくことは、

新しい次代のジャズを切り拓くミュージシャンにとっても、

「スタイル」を確立することの難しさと重要さ、

そして、音楽への真摯なアプローチの仕方や方法論を学ぶ上でも、

きっと大いに勉強になると思うのである。

 

「スタイル」=形式なんてものは、どうでも良くて、

要は「ハート」、「歌心」なんだよ、という人もいるが、

どちらも大切なのである。

一定の形式を究める、「形(かた)」をひたすら洗練させていく所業は、

全ての一流の芸能の共通して辿らなければならない道なのである。

 

頑固に、徹底的に、

パウエルのバップイディオムを理論的に構築し、編纂し、教育し、

実際のプレイにおいても、体現したバリー・ハリスは、

やはりかなり、エライと思うのである。

 

この1970年代に入って、録音された、

タッド・ダメロンの名曲を歌い上げたハリスのアルバムを、

学生時代、本当に繰り返し、繰り返し、よく聴いた。

今、改めて聴いても、新鮮だし、

むしろ昔聴いた時よりも、凄みを感じる。

淡々とした演奏の中に、

ハリスの形式美に捧げた

恍惚と愉悦の心音が聞こえてくるようだ。

素晴らしい!

 

Barry Harris ( p )

Gene Taylor ( b )

Leroy Williams ( ds )

Recorded New York City, 4th June 1975

 

1. HOT HOUSE
2. SOULTRANE
3. THE CHASE
4. LADYBIRD
5. CASBAH
6. IF YOU COULD SEE ME NOW
7. THE TADD WALK
8. OUR DELIGHT

 

それにしても、タッド・ダメロンの曲の素晴らしいことよ!


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Nate Smith ネイト・スミス Kinfolk 2: See the Birds

開放される気分

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2017年にリリースされた、

「Kinfolk: Postcards From Everywhere」の続編と言うことであるが、

前作は聴いていない。

聴いていないというより、ダウンロードするのを止めたような気がする。

当時、あまりに多彩で焦点が絞れきれないと言う印象をもったからだと思う。

 

もともと、デイブ・ホランドのグループなどに参加していた時から、

存在は知ってはいたのだが、それ程、強烈なインパクトを受けた記憶もなかった。

ホランドの「Critical Mass」という渋い、大好きなアルバムや、

クリス・ポッターの傑作「underground」にも、参加をしているのであるが、

正直、ネイト・スミス自体に、それほど強烈なインパクトを感じた覚えはなかった。

 

今回、たまたまitunesの新作を調べていて、

ジャケットがとても印象的で、試聴してみたのであるが、

最近ではめずらしく、思わず最後まで、聴き通してしまった。

何か、気持ちが開放されていくようで、

まるで、日常の生活リズムに、華というかワクワクした気持ちを添えるような、

爽快感を感じた。

結構、楽曲的には、多彩でチャレンジングだとは思うのだけれども、

実に、スムースで、軽やかなビートに心が解放されていく気分なのである。

ネイト・スミスのビートの魔術に、改めて気づかされたように思う。

 

我々世代には、馴染みがないサウンドかも知れないが、

頑なな心にも、すんなり入ってくるということは、

やはり、何かが違うのであろう。

とにかく、何か開放される気分なのである。

体を、ゆっくりスイングしながら、楽しむことができる

幸せな気分にさせてくれる傑作である。

 

Nate Smith, drums, keyboards, percussion
Brad Allen Williams, guitar
Fima Ephron, bass
Jaleel Shaw, saxophone
Jon Cowherd, piano, Fender Rhodes, Hammond B-3 organ
Guest personnel:
Brittany Howard, vocals on “Fly (for Mike)”
Amma Whatt, vocals on “I Burn For You”
Joel Ross, vibraphone on “Altitude” and “See The Birds”
Kokayi, vocals on “Square Wheel” and “Band Room Freestyle”
Michael Mayo, vocals on “Square Wheel”, “Altitude” and “See The Birds”
Regina Carter, violin on “Collision”
Stokley, vocals on “Don’t Let Me Get Away”
Vernon Reid, guitar on “Rambo: The Vigilante” 

 

1. Altitude feat. Joel Ross & Michael Mayo

2. Square Wheel feat. Kokayi & Michael Mayo

3. Band Room Freestyle feat. Kokayi

4. Street Lamp

5. Don’t Let Me Get Away feat. Stokley

6. Collision feat. Regina Carter

7. Meditation: Prelude

8. Rambo: The Vigilante feat. Vernon Reid

9. I Burn for You feat. Amma Whatt

10. See the Birds feat. Joel Ross & Michael Mayo

11. Fly (For Mike) feat. Brittany Howard

 


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John Scofield ジョン・スコフィールド Who's Who

ジョン・スコ節は昔から変わらない

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学生時代、マニアックなギタリスト達の羨望の的であった、ジョン・スコ。

当時、変態フレーズ、アウトフレーズの代名詞の様に言われていた、

ジョン・スコも、今となっては、もはや定番になってしまった。

 

昔、ホントに何度も聴いたこのアルバムを改めて聴いた感想を要約すると、

 ・ジョン・スコは基本、昔も今も変わらないなぁ

 ・これが1979年のリリースとは!今なお、新鮮で斬新、お洒落。

 

特に、アンソニー・ジャクソンとスティーブ・ジョーダンとのコンビネーションは、

今聴いても、クールでキュート。シビれる。

レイジーで、ブルージーなジョン・スコのギターを、

二人のセンシティブでタイトなリズムセクションが、引き立てている構図。

 

特に、表題曲の「Who's Who? 」のカッコイイことと言ったら!

アンソニー・ジャクソンのグルーブ感溢れるベース・フレーズに乗って、

気持ち良く滑っていく、ジョン・スコの流暢なブルースフレーズ。

シンプルなフュージョンではあるかも知れないが、至極の世界である。

 

初期ジョン・スコの中で一番好きなアルバムです。

ケニー・カークランドも相変わらず・・・・(ニンマリ)。

 

John Scofield(G)

Kenny Kirkland(P on 1-2, 4-6),

Anthony Jackson(B on 1-2, 4-5),

Steve Jordan(Ds on 1-2, 4-5),

Sammy Figueroa(Per on 1-2, 4-5),

Billy Hart(Ds on 3, 6),

Eddie Gomez(B on 3, 6),

David Liebman(Ss, Ts on 3, 6)

Released 1979. 

 

1. Looks Like Meringue

2. Cassidae

3. The Beatles

4. Spoons

5. Who's Who?

6. How The West Was Won

 

表題曲のWho's Who?  

Anthony JacksonとSteve Jordanのプロの妙技にご注目を!


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Jon Secada & Gonzalo Rubalcaba ジョン・セダカ&ゴンサロ・ルバルカバ Solos

孤と孤の対峙 Solos

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明らかに、アルバムジャケットの構図は、

トニー・ベネットビル・エバンスのあの名作デュオ・アルバムを意識している。

 

恥ずかしながら、このジョン・セダカというミュージシャンを、

これまで全く知らなかった。

グラミー賞を2回獲得し、2.000万枚のアルバムのセールスを記録していると言う

キューバ出身のシンガーソングライターなのだそうだ。

ジョン・セダカの歌声を聴いた時、非常にキューバ音楽のフレーバーで、

ねちっこいような声に、最初は、少しの抵抗を感じたのであるが、

聴き込むにつれ、不思議にこのアクの強さが、癖になり、身に沁みてきたのである。

 

それは、何よりジョン・セダカの歌声が、ゴンサロとの緊張感あるやり取りにより、

引き立っていることは言うまでもない。

まさに、タイトル「Solos」が表しているように、

それぞれが、自立し、完成された「個」と「個」の、

妥協なき「せめぎ合い」であり、「交歓」であり、「信頼」である。

 

トニー・ベネットビル・エバンスのデュオ作品を意識したとは思われるが、

トニー・ベネットーとエバンスの場合、

お互いの完成された音楽性に、歩み寄る感覚がある様な気がするのに対して、

この作品の対峙は、もっと対等な立場で、「孤」と「孤」が遠慮せず、

自己主張してぶつかり合ったような、凄まじさと緊張感を感じる。

 

ゴンサロのピアノは、いつも畏れ多くて、あまり聴かない方ではあるのだが、

非常に硬質で、正確無比なフィンガリングとリズムに裏つげられた叙情性は、

この作品にも、遺憾無く発揮されている。

誠に素晴らしいピアニズムである。改めて評価したい。

 

二度と再演できない、二人の一回性の交歓の軌跡。

久しぶりに、ピアノとボーカルのデュオの素晴らしさを、

思う存分楽しむことができた。

今年聴いたアルバムの中で、今のところ、一番衝撃を受けた作品である。

 

Jon Secada(vo)

Gonzalo Rubalcaba(p)

 

01.  Rosa Mustia
02. Contigo en la Distancia
03. Soy Tan Feliz
04. Me Faltabas Tú
05. Tú Me Acostumbraste
06. Dime Que Me Amas
07. Longina
08. Delirio
09. La Tarde
10. Hasta Mañana Vida Mía

 

あまりの素晴らしさに、言葉を失った冒頭曲「Rosa Mustia」


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MILT JACKSON  ミルト・ジャクソン Opus De Jazz

思う存分ミルト・ジャクソン

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ミルト・ジャクソンを聴きたくなると、
やはりこのアルバムに手が伸びる。
 
誠に真っ当で、お洒落で、小粋なアンサンブルである。
何しろ、人選が的を得ていて成功している。
限りなくブリリアントなミルトと
修行僧のようなハンク・ジョーンズの対比に、
流麗なメロディーメーカー、フランク・ウェスが華を添える。
 
1曲目なんか、
これでもかと言うほど、各人、ソロを取っている。
何回ソロを回すねん!とツッコミたくなるほど、思う存分ソロをとっている。
でも、そのソロが押し並べて、秀逸で、少しも飽きがこない。
 
ハンク・ジョーンズというピアニストは、
ホントにすごいピアニストだと思うのである。
外連味のない、真っ当なピアノに徹する彼のブロフェッショナルな姿勢を
プロのミュージシャンたちは、もっと見習わなければいけないと思う。
当たり前のようにサラーっと弾いて、確かに地味ではあるが、
伝統工芸職人の無駄のない鮮やかな手技と言ったら良いであろうか、
よく聴くと、やはりすごいピアノなのである。
こうしたスタイルを一生貫き通した、ハンク・ジョーンズの軌跡は、
ジャズ界の宝、伝説と言ってもよいと思うのである。
 
この作品のミルトのプレイは、いつ聴いても、ファンキーで、
音もブリリアントで、つい、聴き惚れてしまう。
個人的な思入れかも知れないが、
ミルトのヴィブラフォンは、50年代の音とフレーズが、
やはり一番、しっとりしていて、間の取り方にも余裕があって、初々しい。
 
「オパス・デ・ジャズ」と言うタイトル通り、
「ジャズとはこうあるべき!」を、
そして、ジャズの醍醐味を、皮膚感覚で感じさてくれる、
素晴らしいアルバムなのである。
 
Frank Wess(fl)
Eddie Jones(b)
1955 10 28 RVG
 
1.Opus De Funk
2.Opus Pocus
3,You Leave Me Breathless
4.Opus And Interlude
 
 
 
 

Hironori Momoi 桃井裕範 Flora and Fauna

羨ましい才能

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 オフィシャルサイトのプロフィールを読んで貰えばわかるけれども、

そんな情報を知らず、この新作「Flora and Fauna」を聴いて、

あー音楽は進化しているんだなぁと、羨ましく、妬ましい気分にさえなった。

 

プロフィールの紹介に、Drummer/Composer/Producerとある。

ドラマーというよりは、むしろプロデューサー、作曲家としての才能の面白さ。

ジャズの範疇に止まらない音楽ではあるが、極めてジャズっぽい。

どの曲も、ジャズを感じさせてくれる、自由とスペースに溢れた色っぽさがある。

正直、聴き惚れてしまった。

とてもイイ感じなのである。

 

こういう、可能性を広げてくれるような、新しい音楽を聴くと、

時代に取り残されたようで、寂しい気持ちにもなるが、

やはりワクワクするし、嬉しくなる。

 

最近、アルバムの作り方が、

様々なゲストを呼んで、ゲストの個性を生かしながら、

ホストの多様な、音楽的アプローチを綴っていくと言った、

作品制作の手法が増えてきているように思うが、

この作品も、その手法が、ホストである桃井の才能の素晴らしさと多様さを

十分に引き出すことに成功している。

曲一つ一つの表情が、違うのだが、トータルとして非常に満足度の高い、

全体性を獲得していると言うか・・・

非常にセンシティブで、敏感で、気負いのない音づくりは、

本当に心地よく、時の流れるままに、聴かせてしまう力がある。

 

タイトルの「Flora and Fauna」 は、植物相と動物相と言う意味なのか?

確かに、ホスト=植物的な地に根の生えた静的でステディな領分と、

    ゲスト=動物的な気ままで攻撃性のある動的でスポンティニアスな領分とが、

上手く共存、融合、触発し合っていような気がする。

 

ぜひ、多くの人に知ってもらいたい、日本の羨ましい才能である。

 

 

01. Into the Stratosphere feat. Nir Felder
02. Skin Deep feat. 佐瀬悠輔
03. Fog feat. Gotch
04. Tail of a Comet feat. Gilad Hekselman
05. Gray Rhino feat. 角田隆太 (from モノンクル)
06. Touches feat. なみちえ and Potomelli
07. IHDS
08. Bury the Hatchet feat. 松丸契
09. Gemini feat. Alan Kwan
10. Water Temple feat. Gold Mountain
11. Regression feat. MELRAW
12. Through the Seasons
13. Hands feat.ミゾベリョウ (from odol)

 

 


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Mccoy tyner マッコイ・タイナー Real Mccoy

孤高の人

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マッコイ・タイナーについて書きたいと思う。

この1967年に録音された、ブルーノートレコード移籍の第一段となった、

本アルバムは、彼のスタイルがある意味完成された金字塔である。

 

また、人選、選曲、アルバムジャケットなど、

どれをとっても、気合の入った、名盤中の名盤だ思う。

 

マッコイ・タイナーは根っからのピアノのイノベーターであり、即興家であるが、

オーガナイザーとしては、ハンコックやチック・コリアらのようなバイタリティを

持ち合わせていなかったことは、その後の彼の変遷を見れば明らかなことである。

ブルーノート時代に残したこの後の軌跡を見ても、ハンコックとは対照的に、

どこか野暮ったく、真面目で、不器用な作品の感を受ける。

マッコイも同時代のハンコックの活躍は相当、意識していたとは思うのだが・・・。

 

しかし、語り尽くされたことかも知れないが、

彼の生み出した奏法は、いわゆる4度重ねのハーモニーの浮遊性を生かし、

ダイナミズムに溢れたものであり、その圧倒的な即興のあり様は、

ジャズピアノスタイルの金字塔として、燦然と輝いているのである。

 

孤高の人、マッコイ。

何より、その後の数々のジャズピアニストに圧倒的な影響力を与えてきたことを

今一度評価すべきだと思うのである。

マッコイより前にこんなピアノを弾く人はいなかった。

特にインパルスからこのブルーノートに移籍する間に、

自らの奏法に磨きをかけて、非常に完成度の高いスタイルを完成させるために、

相当、苦労して、練習して、研究したのであろう。

明らかに、コルトレーン時代のマッコイとは、一線を画している。

そうした、マッコイの気合と意気込みを感じさせるアルバムなのである。

まさに、「モーダルなジャズ」と表現する時の代名詞のような作品である。

 

それにしても、ジョー・ヘンダーソンのカッコいいこと!

(特に、最後の「Blues On The Corner」のジョー・ヘンのソロ)

マッコイ、エルビンらとの相性も最高で、非常にブルージーで、

彼にとっても最良の演奏の軌跡となっている。

 

McCoy Tyner (p)

Joe Henderson (ts)

Ron Carter (b)

Elvin Jones (ds)

 

1.Passion Dance

2.Contemplation

3.Four By Five

4.Search For Peace

5.Blues On The Corner

 


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