JAZZ遊戯三昧

オススメのジャズアルバムを紹介してます。

Simon Moullier サイモン・ムリエ Spirit Song

ヴィブラフォンの新しいカタチ

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以下、世界の音楽情報 「Música Terra」からの引用。

 

ハービー・ハンコック曰く、

「彼の音楽は新鮮で、すべての人に語りかける。彼のようなヴィブラフォンの演奏は これまでに聴いたことがない」


クインシー・ジョーンズ曰く、

「これまで聴いた中で最高のヴァイブ・プレイヤーだ」

 

こんな紹介がされていたら、聴かないわけにはいかない。

早速、itunesで試聴。

確かに、これまで聴いたことのない、ヴィブラフォンだ。

ヴィブラフォンといえば、どうしても、和声的なアプローチを

その本質、得意とする楽器という先入観があるせいか、

サイモンの単音的、打楽器的なアプローチはとても新鮮に聴こえる。

同じ鍵盤打楽器であるピアノにハーモニーは預け、

豊穣なパッセージで、メロディを紡いでいる。

 

全体的に、非常にスペイシーな音楽で、浮遊感が漂い、極めて現代的。

ある意味今風で、次世代のアーティストを喧伝するには良いのかもしれないが、

私としては、もう少し、アコースティックで、シンプルなアプローチでの演奏が、

この新人の魅力を、もっとアピールできるのではないかと思った。

 

全く思いつきではあるが、

今のビル・フリーゼルのトリオ(トーマス・モーガン、ルディ・ロイストン)と

一緒にアルバムを創ったら、面白いのではないか・・・・と。

 

Simon Moullier – vibraphone, balafon, percussions, synths
Dayna Stephens – saxophone (2, 7)
Morgan Guerin – saxophone (1, 3, 5)
Isaac Wilson – piano (1, 3, 5)
Simon Chivallon – piano (2, 4, 7, 8)
Luca Alemanno – bass
Jongkuk Kim – drums

   

1 Spirit Song

2 Acceptance

3 Wind Chaser

4 I'll Remember April

5 Beings of Light

6 Prophecy

7 What If

8 Kenyalang

9 Bala

 


Kenyalang

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ELIANE ELIAS イリアーヌ・イリアス  FANTASIA

イリアーヌ、渾身のピアノ

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このアルバムのライナーノーツに、

イリアーヌのこのアルバムに対する意気込みが伝わってくるような自身の言葉がある。

レコーディングを終えた手応えもあるのか、

興奮して、日本のライターである竹内淳に、堰を切ったように話しかけている。

 

「ねえ、どれから聴く?(中略)イヴァン・リンスも歌で参加してくれたのよ。

 それに娘のアマンダがミルトンのメドレーを唄った時、エディ(ゴメス)も、

 ジャック(ディジョネット)も目を潤ませていたわ。それから聴く?

 それとも「バイーア」から聴く?・・・・・」

 

そんなエピソードを聞かずしても、

このアルバムの出来は、全編通して、彼女の音楽の本質を知る上でも、

非常に重要なアルバムであり、

彼女の音楽に対するピュアな熱い想いが伝わってくるという意味で、

個人的には、イリアーヌの最高傑作であると思う。

 

最近は、その陰影を帯びたトーンの声質で、ボーカルがクローズアップされる

彼女であるが、本当は、類まれな感性を持った素晴らしいピアニストである。

かつて、このアルバムを聴いて、初めてイリアーヌを知ったのであるが、

その時に、彼女のピアノのダイナミズに、時を経つのを忘れ、没頭して、

聴き入ったことが思い出される。

 

是非、聴いてみてください、

当時、8才の娘アマンダに捧げた6曲目の FANTASIA という曲を。

なんて美しい曲なんでしょう。

そして、8曲目のイヴァン・リンスと共演したメドレーのドリーミーなこと。

 

ある意味、イリアーヌは、ジャズという手法を通じて、ブラジル音楽の素晴らしさを

わかりやすく伝えてくれた最大の功績者のひとりであると思うのです。

 

Eliane Elias

Eddie Gomez (tracks: 2, 4, 6, 7, 8),

Marc Johnson(tracks: 3, 5)

Jack Dejohnett(tracks: 2, 4, 7, 8),

Peter Erskin(tracks: 3, 5)

Nana Vasconcelos(tracks: 1, 3, 5, 8) 

Vocals –Amanda Elias Brecker(tracks: 3),

              Ivan Lins(tracks: 8)

 

1. The Girl from Ipanema
2. Wave
3. Milton Nascimento Medley
4. Sabe Você
5. Bahia
6. Fantasia
7. No More Blues
8. Ivan Lins Medley

 

RELEASED IN 1992 BY Blue Note Records

 


Fantasia (To Amanda)


Eliane Elias - Ivan Lins - Fantasia

Joni Mitchell ジョニ・ミッチェル Shadows and Light

何度聴いても・・・

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学生時代、

京都河原町三条下るにあったジャズ喫茶「Big Boy」でバイトをしていた。

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ここでのバイトは、大勢の学生が在籍していたため、

比較的シフトが緩やかで、自分の都合に合わせて、働くことが出来た。

深夜帯(確か夜中の12時まで)に勤めると、タクシー代が出たのも魅力だった。

もちろん、タクシーで帰らず、原付タクシーで岩倉まで帰ったのを覚えている。

 

マスターの好みだが、新譜は聴けたし、時々、外タレのライブもあった。

デューク・ジョーダンジョージ・ケイブルスもここで生で聴いたなぁ。

そして、何より好きなレコードを自分で選ぶことができて、

今から思えば、本当にパラダイスのような楽しいバイトであった。

 

さて、このアルバム、このBig Boyの、ある一人の常連の女性客が、

来店すると、必ずリクエスト。そして、注文は、いつも「アメリカン」。

その耳元で囁くような妖艶な声と、物腰、そしていつも一人で来店して、

同じアルバムを欠かさずリクエストするこの女性の存在は、

バイト仲間の間でも気になる存在で、「アメリカンのお姐さん」と呼ばれていた。

余程好きなアルバムだったのであろう。

 

私も、そのおかげで何度、このアルバムを聴かされたことか。

当時、レーザーディスクの動画を別の店で見たことがあったが、

動画で見る、メセニー、ジャコ、、ブレッカーがあまりに格好良く、

衝撃的であったのを今も思い返す。

そして、あれから30年以上経って、聴いても全く色褪せていない。

今更ながら、胸が熱くなる。なんて贅沢!なんてドリーミー!

 

やはり、あの姐さんは、分かっていらしたのだ。

何度聴いても、いいものはいい!

だから、できればジャズ喫茶で大音量で、みんなと感激を共有したかったのではと。

あの時のお姐さんがこのブログを見て、「それ私だわ」と、

お気づきになられたら、ぜひ、ご連絡を!

 

Joni Mitchell (Vocals, Guitars)
Pat Metheny  (guitar)
Jaco Pastorius (bass)
Lyle Mays (keyboards)
Michael Brecker (saxophone)
Don Alias (Percussion, Drums)

1, Introduction
2, In France They Kiss on Main Street
3, Edith and the Kingpin
4, Coyote
5, Goodbye Pork Pie Hat
6, The Dry Cleaner from Des Moines
7, Amelia
8, Pat's Solo
9, Hejira
10, Black Crow
11, Don's Solo
12, Dreamland
13, Free Man in Paris
14, Band Introduction
15, Furry Sings the Blues
16, Why Do Fools Fall in Love?
17, Shadows and Light
18, God Must Be a Boogie Man
19, Woodstock

 

 

このアメリアという曲に続く、メセニーのソロを聴くと泣いてしまいます。


JONI MITCHELL - Amelia + Pat Metheny Solo

 

 

Dayna Stephens ディナ・スティーブンス  "Right Now!” LIVE AT THE VILLAGE VANGUARD

これが生で聴けたなら

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作品ごとに、テーマがあり、コンセプトもマンネリにならず、

イデアの詰まったユニークなアルバムをコンスタントに制作し続ける、

ディナ・スティーブンス。

 

今回は、ビレッジバンガードでのライブアルバム。

総録音時間は140分と非常に長いが、ライブの雰囲気を堪能できる。

これが生で聴けたなら。

 

何しろ、アーロン・パークス、ベン・ストリート、グレゴリー・ハッチンソンを

従えてのワンホーンアルバム。食指が動くのは当然だ。

特に、アーロン・パークスの参加は、

常々、強力なリーダーシップ(ここではディナ)があるグルーブでの、

演奏で素晴らしいパフォーマンスを残すことが多いと感じている自分にとって、

非常に魅力的なメンバーセレクトである。

予想通り、パークスの演奏は、

久々にジャズのイディオムをまっとうに引き受けた上での、

センス溢れたパフォーマンスを繰り広げており、只々、素晴らしい。

 

そして、冒頭にも記したが、

ディナ・スティーブンスは、難病の腎臓疾患を抱えながらも、

常に、様々な編成やメンバーによる新たな試みを続け、その創造的な活動は、

メインストリーム系のミュージシャンとしては、

先陣を切っているアーティストの一人であると言える。

 

Dayna Stephens (ts, as, ss, Akai EWI4000s)

Aaron Parks (p)

Ben Street (b)

Gregory Hutchinson (ds)

 

01.Smoking Gun
02.Tarifa
03.Ran
04.Contagious
05.Radio-Active Earworm
06.Loosey Goosey
07.Faith Leap
08.Lesson One
09.Blakonian Groove

 


The Beginning of an Endless Happy Monday (Live)

 

 



 

Winton Marsalis ウィントン・マルサリス J Mood

至極、精巧な音楽

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ウィントン・マルサリスも多作であるので、

全作品を聴いている訳ではないが、

ある意味で、ウィントンが到達した、最高に完成度の高い作品が、

このアルバムだと思いたい。

 

あえて、「思いたい」と表現するのは、

本人は、そう思っていないだろうから。

本人は、まだ、ジャズ音楽の探求者として、常に求道中だから。

でも、この作品も、既に35年も前に制作されたもの!

時の経つのはあまりにも早い。

 

このアルバムは、いつ聴いても、何度聴いても、

その端正で丁寧な創り込み、一寸の隙のない精巧な仕上がりに

いつも感心してしまう。

彼の作品の中でも、その完成度の高さは、群を抜いているような気がする。

 

一つ一つの作品に気品があり、即興演奏に対する謙虚な姿勢が感じられ、

聞き惚れてしまうのである。

その魅力を端的に言葉で表現するのは難しいが、

やはりウィントンの、マーカス・ロバーツとの対峙にその秘密があるような気がする。

このアルバムは、明らかにこれ以前のウィントンと一線を画している。

 

小賢しい、偉そうだ、心がない、テクニックだけ、

と言った、本当にうわべしか聴かない人たちの、日本でよく聞く、

ウィントン評を聞くたびに、

このアルバムを、何回も聴いてほしいと思うのである。

確かに気軽にジャズを楽しむという雰囲気のものではないが、

メインストリームの最高のパフォーマンスを記録した作品であることは、

間違いない。

先入観を捨てて、まずは聴いて欲しい作品。

 

Personnel:
Wynton Marsalis (trumpet);
Marcus Roberts (piano);
Robert Leslie Hurst III (bass);
Jeff "Tain" Watts (drums).

Recorded at RCA Studio A, New York, New York from December 17-20, 1985.

 

1. J Mood
2. Presence That Lament Brings
3. Insane Asylum
4. Skain's Domain
5. Melodique
6. After
7. Much Later

 


Wynton Marsalis - J Mood

 

Igor Pimenta イゴール・ピメンタ Sumidouro

ブラジリアン・ジャズの懐の深さ

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2曲目の「Semillas Al Viento」を聴いた時、

ライル・メイズの音づくりの素晴らしさを、懐かしく思い出してしまった。

全盛期のPMG(パット・メセニー・グルーブ)の雰囲気を持った曲である。

 

このアルバムは、他にも実に多彩な世界の音楽を取り込んでおり、

ジャズ、フォークロア、クラシックなど、様々なジャンルの音楽を

ブラジル音楽という実に懐の深い通底する環境の中に、見事に取り入れ、

本当ならば、散漫になりがちなアプローチを、

一つの魅力的な絵巻物として結実している。

 

このアルバムは、ブラジルのベーシスト兼作曲家である、

イゴール・ビメンタという人の初リーダー作であるようだが、

曲ごとに、楽器の編成を変え、丁寧なアンサンブルを創り上げており、

満を辞して、完成させた作品なのであろう。

 

gor Pimenta – acoustic bass, fretless electric bass
Edu Nali – drums
Neymar Dias – viola caipira, guitar
Vinícius Gomes – guitar
Salomão Soares – piano
André Mehmari – piano, synthesizers
André Juarez – vibraphone
Jussan Cluxnei – clarinet
Alexandre Silvério – fagotto
Ricardo Braga – percussion
Vana Bock – cello
Daniel Grajew – accordion
Toninho Ferragutti – accordion
Rafa Castro – accordion, vocal
Rafael Altério – vocal
Tatiana Parra – vocal
Antonio Loureiro – vocal

 

01. Lamentos de Mãe d’Água
02. Semillas Al Viento
03. Brasilina, Chico e Zeize
04. A Sede do Peixe
05. Insieme
06. Procissão das Velas
07. Quarteto para Tempos Bicudos
08. …queima, Fere, Deixa Sangrar
09. Three Friends
10. O Sonho de Lara

 


2- Semillas al Viento - Igor Pimenta

 

Thelonious Monk セロニアス・モンク Palo Alto

モンク 1968年 高校で吠える

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ステキなジャケットである。

1968年のモンクである。

キング牧師が暗殺された年に、カリフォルニアの一人の高校生が奮起して、

「ジャズを通して結束を」との思いに応え、モンクが出演したのだそうだ。

その学内コンサートを収録したもの。

 

モンクの数多のライブ音源のうちの一つであり、全てを聴いた訳ではないが、

高校で人種差別に抗議して行われたという背景を無視しても、

臨場感、選曲、尺の長さ、モンクやチャリ〜・ラウズのソロの出来など、

どれを取ってもモンク音楽のエッセンスが凝縮されており、

とても聴きやすく、ストレートに胸に響いてくるようなライブ盤となっている。

 

1968年のモンクのピアノを聴くと、

流石に、長年のレパートリーの演奏で、少しこなれた感じは否めないが、

余裕があるせいだろうか、曲の合間合間に、これまで聴いたことのないような、

モンクの遊び心を楽しむことができる。

たとえば、「Blue Monk」の解釈などは、とても斬新。

1967年と68年に録音された、「アンダーグラウンド」という

ステキなアルバムもあるが、この頃のモンクは、

結構、調子が良かったのではないかと思うのである。

 

数多の未発掘音源が発表される度に、先入観で聴かないことが多い中、

本作は、久しぶりに、興奮して楽しむ事が出来ました。

 

Thelonious Monk (piano)

Charlie Rouse (tenor sax),

Larry Gales (bass),

Ben Riley (drums)

 

01. Ruby, My Dear
02. Well, You Needn’t
03. Don’t Blame Me
04. Blue Monk
05. Epistrophy
06. I Love You Sweetheart of All My Dreams

 


Thelonious Monk – Palo Alto (Mini Documentary)