至極、精巧な音楽
ウィントン・マルサリスも多作であるので、
全作品を聴いている訳ではないが、
ある意味で、ウィントンが到達した、最高に完成度の高い作品が、
このアルバムだと思いたい。
あえて、「思いたい」と表現するのは、
本人は、そう思っていないだろうから。
本人は、まだ、ジャズ音楽の探求者として、常に求道中だから。
でも、この作品も、既に35年も前に制作されたもの!
時の経つのはあまりにも早い。
このアルバムは、いつ聴いても、何度聴いても、
その端正で丁寧な創り込み、一寸の隙のない精巧な仕上がりに
いつも感心してしまう。
彼の作品の中でも、その完成度の高さは、群を抜いているような気がする。
一つ一つの作品に気品があり、即興演奏に対する謙虚な姿勢が感じられ、
聞き惚れてしまうのである。
その魅力を端的に言葉で表現するのは難しいが、
やはりウィントンの、マーカス・ロバーツとの対峙にその秘密があるような気がする。
このアルバムは、明らかにこれ以前のウィントンと一線を画している。
小賢しい、偉そうだ、心がない、テクニックだけ、
と言った、本当にうわべしか聴かない人たちの、日本でよく聞く、
ウィントン評を聞くたびに、
このアルバムを、何回も聴いてほしいと思うのである。
確かに気軽にジャズを楽しむという雰囲気のものではないが、
メインストリームの最高のパフォーマンスを記録した作品であることは、
間違いない。
先入観を捨てて、まずは聴いて欲しい作品。
Personnel:
Wynton Marsalis (trumpet);
Marcus Roberts (piano);
Robert Leslie Hurst III (bass);
Jeff "Tain" Watts (drums).
Recorded at RCA Studio A, New York, New York from December 17-20, 1985.
1. J Mood
2. Presence That Lament Brings
3. Insane Asylum
4. Skain's Domain
5. Melodique
6. After
7. Much Later