この一曲 Little Girl Blue !
リトル・ガール・ブルーという1曲だけを聴くために、
トレイに載せるアルバムである。
そもそも70年代以降のロリンズの音楽には、
それほど興味も関心も薄くなってしまっている自分ではあったが、
就職して間もない頃、購入したこのアルバムに入っている、
リトル・ガール・ブルーの演奏に、心震えた記憶が蘇ってくる。
70年代以降のロリンズの音は、もう開放しきっていて、
屈託がなく、どこまでも遠くの空に突き抜けて行ってしまうような、
単調さに、聴く気が失せてしまうのは正直あるのだが、
(単調さというと、言い過ぎかもしれないが、、、、)
音色、フレーズ、アーティキュレーション全てにおいて、
大胆で奔放で、かつストイックで陰りのある孤高のサウンド感に満ちていた
50から60年代のロリンズの音楽の危ない魅力とは明らかに一線を画している。
ああ、もうかつてのスリリングなロリンズの音は戻ってこないんだと、
最新作を聴くたびに落胆していた私にとって、
この一曲のみは、心に響いたのである。
確かに原曲の哀愁を帯びた曲調も大きな要因なのだが、
ロリンズのあまりに素直で、朗々と歌いあげる、ストレートな泣き節に、
心をわしづかみにされてしまったのである。
社会人になって、心身ともに緊張していた若者の心に、
老練のロリンズの、むしろ朗々とした悲しみに溢れた衒いのないブローが
沁みわたったのであろう。
他にも、一部、
フランフォードとの共演や、トミ・フラが参加するなど、
話題性もあるアルバムであるし、
リラックスした雰囲気で、スタンダートジャズが楽しめるアルバムでもある。
遠慮がちに巨匠ロリンズに寄り添う、若いブランフォードのブローも一聴の価値あり。
Sonny Rollins: tenor saxophone
Branford Marsalis: tenor saxophone (tracks 1 & 5)
Clifton Anderson: trombone(tracks 4, 6 & 7)
Tommy Flanagan: piano (tracks 1 & 5)
Mark Soskin: piano (tracks 2-4, 6 & 7)
Bob Cranshaw: electric bass (tracks 2-4, 6 & 7)
Jerome Harris: electric bass (tracks 1 & 5), guitar (tracks 2-4, 6 & 7)
Jack DeJohnette: drums (tracks 2-4, 6 & 7)
Jeff Watts: drums (tracks 1 & 5)
1. For All We Know
2. Tennessee Waltz
3. Little Girl Blue
4. Falling in Love with Love
5. I Should Care
6. Sister
7. Amanda
Recorded in NY on June 3 (tracks 1 & 5),
August 5 (tracks 2 & 3) and September 9 (tracks 4, 6 & 7), 1989