JAZZ遊戯三昧

オススメのジャズアルバムを紹介してます。

Hank Mobley ハンク・モブレー Soul Station

フゴフゴ、モコモコのモブレー、頑張る

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個人的に大好きなテナーである。

「モブレーは、いいなぁ。レイジーで、茫洋としたフレーズだけど、

それがなんとも円やかで味があるねぇ。好きやわぁ」

と、かなりテナーサックスが上手い某友人に、同意を求めたところ、

「ダメ、モブレーは。吹けとらん。参考にならん。聴く気にならん」

と、一刀両断でした。

 

某友人のようにサックスをある程度の水準で操れる人にとっては、

確かに「フゴフゴ」、「モコモコ」の吹ききれていないモブレーの演奏は、

やはり、とても認められるものではないのであろうか。

 

でも、このモブレーの代表作を聴くと、

「ジャズ聴いたなあ」と言う実感が湧いてくるのです。

選曲もいいし、聴きやすく、何よりワン・ホーンの魅力が詰まっている。

モブレーさん、相変わらず「フゴフゴ」「モコモコ」しているところもありますが、

相性の良いウィントン・ケリーやアート・プレイキーの好サポートもあって、

いつもより、切れ味鋭く、頑張っているではないですか!

 

モブレーの舌足らずで、雄弁、器用な方ではないが、

いつも一生懸命、吹き切る姿勢は、何か、憎めない親しみを感じるのである。

マイルスパンドでのライブ演奏におけるモブレーのソロを聴くといつも思うのだが、

よくも、マイルスに臆せず、長々とソロを取れたものだと感心してしまう。

(実際、マイルスからは、「コルトレーンがいてくれればなぁ」などと、

嫌味を言われたようだが)

ある意味図太い神経の持ち主なのかもしれない。

 

まあ、そんな勝手な探りは抜きにしても、

このアルバムは、ミディアムスイングするハード・バップの醍醐味を、

わかりやすく伝えてくれる、初心者にこそオススメの素晴らしいアルバムです。

ぜひ、聴いてみてください。

 

Hank Mobley (ts)
Wynton Kelly (p)
Paul Chambers (b)
Art Blakey (ds)

REC  1960年2月7日

1. Remember
2. This I Dig Of You
3. Dig Dis
4. Split Feelin's
5. Soul Station
6. If I Should Lose You

 


Hank Mobley - Remember

 

 

 

Till Bronner&Bob James ティル・ブレナー&ボブ・ジェームス On Vacation

待ってました! 大人の休暇のために

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タイトルは「ON VACATION 」、休暇中。タイトルが秀逸!

1曲目と2曲目を試聴して、すぐにダウンロード。

大人の休暇、夜のドライブ、都会の夜景、そんなシチュエーションにぴったり。

こういう音楽にも、弱いなあ。

 

熟練した職人による、洗練された大人の音楽。

2曲目の「Lemonade」は、ティル・ブレナーがボーカルとしてもその魅力を

遺憾無く発揮した、軽快でとびっきりお洒落なボッサ・チューン!

こういうのに弱いんだなぁ。とろけてしまいます。

 

ボム・ジェームスと言う人は長年、ホントに頑張っていますね。

時代の感覚をうまく掴んで、とても上質で親しみやすいサウンドを創り続けている。

彼も既に、80歳。

なのに、こんな若々しく、瑞々しい音楽を創ることができることが素晴らしい。

何と言っても、ティル・ブレナーの人選が成功している。

オーガナイザーのボム・ジェームスの手によって、ティルのトランペットが、

秋の夜長に、優しく語りかけてくる。

ぜひ聴いてみてください。癒されますよ。

 

Till Bronner – trumpet, flugelhorn, vocals
Bob James – piano, keyboards
Christian Von Kaphengst – double bass, electric bass
Harvey Mason – drums
David Haynes – drums
Wolfgang Haffner – drums
Yuri Goloubev – double bass

1.Save Your Love for Me

2.Lemonade

3.Late Night

4.Lavender Fields

5.September Morn

6.Elysium

7.I Get it From You

8.Miranda

9.Scent of Childhood

10.On Vacation

11.Sunset Vale

12.Basin Street Blues

13.If Someone had Told Me (Bonus Track)

14.September Morn (Radio Edit)

 

 


The Making of ON VACATION

Miles Davis マイルス・デイビス Miles Ahead

少年のようなマイルス

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映画「マイルス・デイビス クールの誕生」を観てきた。

とてもとても小さなスクリーンで、見る前に少し意気消沈したが、

実際、映画が始まると、そんなことは一切気にならなくなり、

あっという間に見終わってしまった。

彼が遺した音楽の素晴らしさを改めて概観できた気がする。

 

映画自体は、彼の私生活と音楽を対比させて紹介するような構成を取っており、

元妻のフランシスへの嫉妬や暴力など、彼と関わった様々な人の証言により、

人格的には、かなり偏屈で問題の多い彼ではあったことを印象付けながら、

何故あんなに美しい音楽を創造できたのかという、フランシス自身の言葉も織り交ぜ、

マイルスというアーティストの影と光をコンパクトにまとめた映画であった。

 

そして、とてもこの映画で印象深かったのは、

ギル・エバンスとのコラボレーションをしている時のマイルスの輝くような、

まるで、夢見る少年のような表情とプレイ。一番幸せそうなマイルス。

 

この「マイルス・アヘッド」というアルバムは、

もともと、私に取って別格の一枚で、思入れも非常に強いので、

その素晴らしさ、魅力を客観的に伝えることはできないかもしれないが、

何より、ギルのオーケストレーションに乗って奏でるマイルスのフリューゲルの

軽やかで、ふくよかな音色とよく唄っているフレーズが、あまりに美しく心地よい。

マイルスというアーティストが持つ音楽性、どこが寂しげで、ピュアで、

とんがっているけど、時に限りなく優しい・・・・、

そんなマイルスの魅力の本質が、このアルバムに詰まっているような気がする。

 

やはり、ギル・エバンスとの出会いが、変化して止まないオーガナイザーとしての

マイルスの素質を開花させたと言っても良いと思う。

このアルバムを聴くと、マイルスの興奮と幸せとリラックスと生きる喜びが

ストレートに伝わってくるのである。

映画を観終わって、自宅でこのアルバムを聴き直して、

改めて、感激を新たにした。

 

1 Springsville
2 The Maids Of Cadiz
3 The Duke
4 My Ship
5 Miles Ahead
6 Blues For Pablo
7 New Rhumba
8 The Meaning Of The Blues
9 Lament    

10 I Don't Wanna Be Kissed (By Anyone But You)

 

Miles Davis (flugelhorn); Gil Evans (arranger, conductor);

Lee Konitz (alto saxophone);

Taft Jordan, Ernie Royal, Bernie Glow, John Carisi, Louis Mucci (trumpet);

Jimmy Cleveland, Frank Rehak, Joe Bennett (trombone);

Tom Mitchell (bass trombone);

Willie Ruff, Tony Miranda, Jimmy Buffington (French horn);

Bill Barber (tuba); Romeo Penque (flute, clarinet, bass clarinet, oboe);

Sid Cooper, Eddie Caine (flute, clarinet); Danny Bank (bass clarinet);

Wynton Kelly (piano); Paul Chambers (bass); Art Taylor (drums)

 


Miles Davis & Gil Evans 1959

 

 

 

 

 

Roberto Cipelli, Paolo Fresu ロベルト・シッペリ& パオロ・フレス  L’equilibrio di Nash

チェット・ベイカーポール・ブレイに捧ぐ

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また、心洗われる素晴らしいアルバムに出会ってしまった。

 

チェット・ベイカーポール・ブレイが1986年に、

スティープルチェイスに遺した傑作デュオ「Diane」に着想を得て、

ロベルト・シッペリが、盟友パオロ・フレスをフューチャーし、

制作したアルバムが本作。

 

Diane」でも演奏された「Little Girl Blue 」を聴くと、二人の、

チェットとポールに対する敬愛の想いが伝わってくるような気がする。

一部多重録音なども取り入れ、非常に、心癒される

極上のデュオ・アンサンブルを堪能することができる。

 

特に、パオロ・フレスのトランペットが実に素晴らしい。

まろやかで、奇を衒わないストレートな分かりやすいフレーズが心地よい。

こうしたスタンダードな曲の演奏にこそ、パオロの真価が発揮されるように思う。

 

18曲、1時間に及ぶ演奏が、夢のようにあっという間に過ぎてゆく。

 

Roberto Cipelli(p)

Paolo Fresu (tp)

Release Date : 2020

01. Donna dona (05:08)
02. Alfonsina y el Mar (03:07)
03. Il momento perfetto (03:02)
04. Little Girl Blue (05:11)
05. Strategia, pt. 1 (01:53)
06. Parlami d’amore Mariù (03:49)
07. Practical Arrangement (03:42)
08. L’uomo ironico (02:15)
09. Strategia, pt. 2 (01:10)
10. Lasciatemi morire (04:04)
11. Stillness (02:37)
12. Coraçao Vagabundo (03:38)
13. Strategia, pt. 3 (01:39)
14. Lamento della ninfa (04:25)
15. L’equilibrio di Nash (Per Moni) (03:02)
16. Pure Imagination (03:36)
17. Can’t Help Singing (03:08)
18. Preludio n° 20 in do min op. 28 (02:13)

 


Roberto Cipelli with Paolo Fresu - Prelude Op.28 Official Video


Little Girl Blue (feat. Paolo Fresu)

Marcin Wasilewski Trio マルチン・ボシレフスキ Trio

アノトリオ 〜美の結晶〜

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余りにも美しすぎるピアノトリオ。

センシティブで、クール、聴く度に、深遠なるトリオミュージックの

真髄に嵌っていく。そんな素晴らしいアルバム。

 

何が素晴らしいのか、稚拙な分析ながら、整理してみたい。

 

1 ピアノのダイナミズムを知り尽くした音

  マルチン・ヴァシレフスキは、ピアノという楽器が持つダイナミズムを最大限に 

        活かせることのできる稀有なピアニストである。その音像、タッチ、陰影、響き、

        ハーモニーは、ピアノの魅力を知り尽くし、コントロールできる技量がなければ、

        生み出せるものではない。

 

2 ピアニズムを引き立てるベースとドラム

  これは、私の思い入れかも知れない。

  トリオとしての三者の関係性は対等であるのかも知れないが、あくまでこのトリオ

  は、ピアノを主役にした音像をいかに美しく表現できるかということに主眼が置か

  れ、そのためには、ベースとドラムがどのようにアプローチしたらよいのかを、徹

  底的に、緻密に考えられているところに、最大の魅力があると思う。

  三者が個々に主張、自立しているというより、明らかに、ピアノにとって的解なサ

  ポートとは何かを、考え尽くしている気がするのである。

 

3 フォーク・ロックテイスト

  東欧・北欧系のリリシズムと言ってしまえば、元も子もないような気がする。

  確かにマルチン・ヴァシレフスキの創り出すメロディは、極めてリリカルで、クラ

  シカルな美しさに裏付けられているのは確かなのだが、何か、ロックやフォークの

  懐かしいテイストを感じるのである。

  ある意味ライル・メイズに近い存在と言って良いのかも知れない。非常にドラマ

  チックでロマンティックな曲作り。そうしたバックボーンがベースにありつつ、

  ジャズインプロバイザーとしての技量も相当なもので、非常に分かりやすく、ジャ

  ズの魅力を伝えているところが素晴らしい。

   

 ため息が出るような、美の結晶。宝石箱のような作品を開けてみませんか。

 

 

Marcin Wasilewski : piano
Slawomir Kurkiewicz : double-bass
Michal Miskiewicz : drums

ECM 1891 (2004)

 

1.Trio Conversation (Introduction)
2.Hyperballad
3.Roxane’s Song
4.K.T.C.
5.Plaza Real
6.Shine
7.Green Sky
8.Sister’s Song
9.Drum Kick
10.Free-bop
11.Free Combination For Three Instruments
12.Entropy
13.Trio Conversation (The End)

 

 

次の動画は、本アルバムではなくSimple  Acoustic Trio (同じメンバー)名義の名盤「Habana」からの1曲ですが、このトリオの本質がよく分かる演奏のひとつです。


Green Sky

 

Ron Miles ロン・マイルス Rainbow Sign

はい、とても好みの音楽です。

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メンバークレジットからして、なんとなく想像できる音像。

実際、聴いてみたら、

予想以上に身体全体に染み込んでくるような心地良さ。

 

はい、とても好みの音楽です。

 

これは自分にとって、2020年度の中でも上位間違いなし。

 

まず、こういう音楽を創れることが羨ましい。

ゆったりとしたテンポで紡がれる曲想は、どれも伸びやかで、穏やか。

さざ波一つない静かな大海に泳ぎ出でて、

気持ちよく、ゆったりと泳いでいくような演奏。

 

はい、こういうプレイがしてみたいです。

 

メンバーの奏でる音に注意深く耳を傾けながら、

一音一音、想いを込めて、大切に大切に対話の喜びを噛みしめる。

この5人の対話のあり様が、実に素晴らしい。

それぞれが硬質で折り目正しく、他者を敬い、傷つけない。

お互いに信頼し合い、それぞれが力量のあるアーティストのみが成し得る境地です。

 

野暮な解説はいらない。

ぜひ、多くの人に触れていただきたい、最高の音楽です。

 

Ron Miles (tp)

Jason Moran (p)

Bill Frisell (g)

Thomas Morgan (b)

Brian Blade (ds)

 

1.   Like Those Who Dream
2.  Queen Of The South
3.  Average
4.  Rainbow Sign
5.  The Rumor
6.  Custodian Of The New
7.  This Old Man
8.  Binder
9.  A Kind Word

 


The Rumor

John Coltrane ジョン・コルトレーン Coltrane's Sound

 ちゃんとコルトレーンを聴きたいときに

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本作は、「ジャイアント・ステップス」の一年後、

そして、「マイ・フェイバリット・シングス」とほぼ同時期に

録音された音源で、「コルトレーン・プレイズ・ザ・ブルース」と言うアルバム

も出されたが、二つの大傑作に挟まれて、陰が薄いアルバムではあると思う。

 

しかし、時たま襲ってくる、ちゃんとコルトレーンを聴きたい時に、

手に取ってしまうのが、このアルバム。

特に2曲目の「Central Park West」と4曲目の「Body And Soul」

6曲目の「Satellite」が無性に聴きたくなる。

 

Central Park West」は不思議な魅力を持つ一曲である。

ジャイアント・ステップスのコード進行に似た展開ではあるが、

非常に淡々とした静かな演奏に終始している。

コルトレーンらしくないというか、

少しも盛り上げよう、高揚しようとしない演奏が、とても気になるが、

とてもいい。

 

そして、「Body And Soul」。

このアレンジは素晴らしく、いつも聞き惚れてしまう。

いつも聞き飽きたバラード演奏に、新しい解釈を得て、生まれ変わっている。

マッコイ・タイナーの才能が大きく貢献している曲だと思う。

 

最後に、「Satellite」はピアノレスのトリオで演奏されている。

これも、非常に肩の力が抜けたというか、とりあえず吹いているというか、

淡々とした、練習曲のような吹き方が、印象的でとても気になってしまうのである。

 

ちゃんとコルトレーンを聴きたいときに、

ジャイアント・ステップス」と「マイ・フェイバリット・シングス」を

聴けば良いのだが、適度に脱力感のある、気を張らないコルトレーン

聴きたくなるのは、何故なんだろう。

 

コルトレーンというアーティストは、確かにずっーと聴いていると、

どうしても疲れてしまうのである。

ただ、時たま、ラジオかなんかで不意にコルトレーンの怒涛のフレーズを

聴いたりすると、血が騒ぐのである。

やはりスゲェーなぁーと。早くうち帰って聴きたいと。

それで、真剣にアルバムを聞き返してみたりすると、

コテンパンに畳み掛けられて、疲れるのである。

そんな時に、この「夜は千の眼を持つ」は、

ちょうどいい加減のコルトレーンサウンドに浸ることができて、

心地よい疲れで終わることができるのである。

 

 

John Coltrane (ts,ss)

McCoy Tyner (pf)

Steve Davis (ba)

Elvin Jones (ds)

1960,10,24 10,26

 

1.The Night Has A Thousand Eyes

2.Central Park West

3.Liberia

4.Body And Soul

5.Equinox

6.Satellite

7.26-2

8.Body And Soul (Alternate Take)

 

John Coltrane Quartet - Central Park West