少年のようなマイルス
映画「マイルス・デイビス クールの誕生」を観てきた。
とてもとても小さなスクリーンで、見る前に少し意気消沈したが、
実際、映画が始まると、そんなことは一切気にならなくなり、
あっという間に見終わってしまった。
彼が遺した音楽の素晴らしさを改めて概観できた気がする。
映画自体は、彼の私生活と音楽を対比させて紹介するような構成を取っており、
元妻のフランシスへの嫉妬や暴力など、彼と関わった様々な人の証言により、
人格的には、かなり偏屈で問題の多い彼ではあったことを印象付けながら、
何故あんなに美しい音楽を創造できたのかという、フランシス自身の言葉も織り交ぜ、
マイルスというアーティストの影と光をコンパクトにまとめた映画であった。
そして、とてもこの映画で印象深かったのは、
ギル・エバンスとのコラボレーションをしている時のマイルスの輝くような、
まるで、夢見る少年のような表情とプレイ。一番幸せそうなマイルス。
この「マイルス・アヘッド」というアルバムは、
もともと、私に取って別格の一枚で、思入れも非常に強いので、
その素晴らしさ、魅力を客観的に伝えることはできないかもしれないが、
何より、ギルのオーケストレーションに乗って奏でるマイルスのフリューゲルの
軽やかで、ふくよかな音色とよく唄っているフレーズが、あまりに美しく心地よい。
マイルスというアーティストが持つ音楽性、どこが寂しげで、ピュアで、
とんがっているけど、時に限りなく優しい・・・・、
そんなマイルスの魅力の本質が、このアルバムに詰まっているような気がする。
やはり、ギル・エバンスとの出会いが、変化して止まないオーガナイザーとしての
マイルスの素質を開花させたと言っても良いと思う。
このアルバムを聴くと、マイルスの興奮と幸せとリラックスと生きる喜びが
ストレートに伝わってくるのである。
映画を観終わって、自宅でこのアルバムを聴き直して、
改めて、感激を新たにした。
1 Springsville
2 The Maids Of Cadiz
3 The Duke
4 My Ship
5 Miles Ahead
6 Blues For Pablo
7 New Rhumba
8 The Meaning Of The Blues
9 Lament
10 I Don't Wanna Be Kissed (By Anyone But You)
Miles Davis (flugelhorn); Gil Evans (arranger, conductor);
Lee Konitz (alto saxophone);
Taft Jordan, Ernie Royal, Bernie Glow, John Carisi, Louis Mucci (trumpet);
Jimmy Cleveland, Frank Rehak, Joe Bennett (trombone);
Tom Mitchell (bass trombone);
Willie Ruff, Tony Miranda, Jimmy Buffington (French horn);
Bill Barber (tuba); Romeo Penque (flute, clarinet, bass clarinet, oboe);
Sid Cooper, Eddie Caine (flute, clarinet); Danny Bank (bass clarinet);
Wynton Kelly (piano); Paul Chambers (bass); Art Taylor (drums)