妖しい母娘の音楽
前作、「imagina」から気になっていた、リタ・バイエスの音楽。
ギターとトロンボーンを操り、その歌声もどこか神秘的。
前作でも、母親のエリザべス・ローマのギターを大きくフューチャーしており、
その年老いた(?)ようなエリザベスの風貌からは想像できない、
格調高く正当な実に素晴らしいスパニッシュ・ギターが、
娘の少しアンニュイな歌声や、なかなか味のあるトロンボーンの音色と絡み、
シンプルでありながら、奥行きのある音楽を創り出していた。
今回も、同じ路線であろうと、ワクワクしながら、通して聴いてみたのだが、
この、まだ若いアーティストの懐の深さに驚いた。
アプローチが多様で、冒険的になっているだけでなく、
さらに、少し不気味な執拗さというか、妖艶で怪しい側面も垣間見るようで、
非常に興奮した。
一曲目の「Nunca Vas a Comprender」の
ほのぼのとしたテイストに騙されてはいけない。(でも大好き!)
どんどん毒味を増し、妖しく、手に負えない女性的な暗さのようなものが、
立ち現れてくる。
そこがとてもスリリングでもある。
個人的には、8曲目の「Un tros d'ahir」という曲が心に染みた。
倦怠と明るさが同居しており、トロンボーンの音色が、空に溶け込んでいくようだ。
Rita Payés – vocal, trombone, guitar
Elisabeth Roma – guitar
Horacio Fumero – contrabass
Juan Berbín – percussion, drums
Eudald Payés – trumpet
Pol Batlle – electric guitar