JAZZ遊戯三昧

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SCOTT HAMILTON  スコット・ハミルトン  LIVE IN BERN

「歌う」ことの難しさ

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スコット・ハミルトンを聴くと、いつも感じるのは、
「よく歌ってるなあ」ということ。
これから、ボーカルを志す人は、
この人のソロをこそ、勉強すればいいのにと思う。

スコット・ハミルトンの、ほぼ予定調和で、流麗なソロが流れてくると、
思わず、サウナの後の水風呂みたいに、
体中に心地良さが沁みわたってくるような気分になる。
その語り口は、大らかで伸びやか、
わかりやすくて、なじみやすい。

思わず、彼がソロに入ると、ニンマリしてしまう。
その奇を衒わないアプローチは、ストレートで明快。
スリルやドキドキ感は薄いかもしれない。
でも、何か、心にさざ波が打ち寄せるような不思議な魅力を備えている。

言うまでもないことだが、スタンダートをよく解釈して、
歌い上げるということは、簡単なようで簡単ではない。
なかなかできる芸当ではない。
生まれ持ってのセンスもさることながら、
厳しい鍛錬、探求といった向上心がなければ培われるものではない

偉大なインプロバイザーに共通する2つの特徴として、
・タイム感覚が際立って優れている(リズム感に優れ、「共振力=リズム伝振性」が高い)
・曲全体の構成、展開を深く理解、追求している(「物語性」が高い)
ことが挙げられると思う。
どんなにテクニカルに上手くても、
このタイム感覚と物語性が劣っていると、説得力に欠けるものになってしまう。

「歌う」ことの大切さ、と簡単に言ってしまうけれど、
「歌える」ようになるためには、天性の素質もあると思うが、
相当な覚悟をもって練習し、探求を続け、常に想像力を豊かに働かせなければ、
本当に「歌う」ことなど、できないのかもしれない。
スコット・ハミルトンのブローを聴くたびに、そう思ってしまう。

繰り返しになるが、
「思わずニンマリ」して聴き惚れてしまうアーティストというのは
私もそれほど多くはないのであるが、
スコット・ハミルトンを聴くと、いつも余計にニンマリしてしまうのである。

 

Scott Hamilton(tenor saxophone)
Tamir Hendelman(piano)
Christoph Luty(bass)
Jeff Hamilton(drums)

 

1. September In The Rain
2. All Through The Night
3. Watch What Happens
4. Soul Eyes
5. This Can't Be Love
6. There'll Be Some Changes Made
7. Sybille's Day
8. Key Largo
9. Woody'n You
10. The Champ
11. Ballad For Very Tired And Very Sad Lotus Eaters
12. You And The Night And The Music
13. Centerpiece

 


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