JAZZ遊戯三昧

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Wether Report ウェザー・リポート Wether Report

 ザビヌルとビトウスの関係性について

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言わずと知れた、ウェザー・リポートのファーストアルバムである。

改めて、曲のクレジットを見て、

ウェザー・リポート創世記のメンバーの立ち位置というものに想いを馳せてみた。

 

まず、1曲目の「Milky Way」が、ショーターとザビヌルの共作。

このまるで、キューブリックの「2001年宇宙の旅」の映画音楽のような

スターティングは、このユニットの可能性、メッセージ性を象徴している。

まさに、ザビヌルらしいコスモロジーな卓越した感覚が端的に現れた曲である。

 

2曲目の「Umbrellas」は、ショーター、ザビヌル、ビトウスの

共作となっているが、この曲の解釈は難しい。

ビトウスの非常にリズミックなエレベが際立つ展開となっていること。

ザビヌルの影は薄いように見えるが、

実は、ザビヌルがビトウスにこのリズミックさを出すよう、かなり強引に

ディレクションした実験的な作品で、緊張感のあるテイストを生んでいる。

 

3曲目の「Seventh Arrow」は、ビトウスのクレジットで、

一転、ビトウス自身ががやりたいようにやった曲である。

まさにビトウス主導のビトウスらしいサウンド作りである。

 

4曲目の「Orange Lady」は、ザビヌルのクレジット。

僕はやはり、ザビヌルの初期WRの方向性はこの曲に集約している気がする。

敬虔で宇宙的な広がりを感じる神秘性とともに、牧歌的な安らぎが備わった曲想。

この牧歌的と言うキーワードは、実はビトウスの一面にもあり、

両者が意気投合した接点であろうと思う。

ビトウスの初リーター作「インフィニット・サーチ」の表題曲などは

同じ感性を感じる。

 

5曲目の「Morning Lake」もまた、ビトウスのクレジット。

4曲目同様、ビトウスとザビヌルの方向性が一致していた頃の秀作。

牧歌的で、理想郷のイメージとか輪廻感のある曲想。

マイルス時代にはなかった曲想であり、新鮮である。

 

6曲目の「Waterfall」は、ザビヌルのクレジット。

個人的に、とても好きな曲で、繰り返されるフェンダーローズのリフに、

気持ちよさそうに、乗っかってくるビトウスのベース。

そしてショーターが悠々と駆け巡る。

初期WRのまだ、即興的な傾向が強く感じられる作品。

 

7曲目と8曲目は、ショーターのクレジット。

やはりショーターの曲はメロディアスでわかりやすいし、ドラマチック。

少しほっとしてしまう。

 

この、記念すぺきファーストアルバムは、この1970・80年代を

代表するジャズユニットの将来のポテンシャルを仄めかすのに、

十分な魅力と神秘性を備えているが、

このアルバムからスイート・ナイターあたりまでは、特にビトウスという、

秀でたプレイヤーの存在が大きくグループサウンドに影響を与えているといえる。

つまり、初期WRのリーダーはザビヌルとビトウスの二人がいたと言っても良い。

 

最終的には、ザビヌルは、ビトウスの描く音楽像とは乖離していくわけであるが、

まだ、二人の関係が蜜月だった頃の、初々しく刺激的なサウンドを堪能できる。

結局、ザビヌルはグループのオーガナイザーとして常に進化していくタイプ、

一方、ビトウスは、プレイヤーとしての即興性を突き詰め、重視していくタイプ。

 

ザビヌルは、ビトウスと別れて以降、

本当の意味でザビヌル主導のWRサウンドを繰り広げていくのである。

その軌跡の素晴らしさは、20世紀の奇跡である。

 

Wayne Shorter(Ss),

Joe Zawinul(Key),

Miroslav Vitous(B),

Alphonze Mouzon(Ds, Voice),

Airto Moreira(Per),

Burbara Burton(Per) 

 

1. Milky Way

2. Umbrellas

3. Seventh Arrow

4. Orange Lady

5. Morning Lake

6. Waterfall

7. Tears

8. Eurydice

 


Milky Way - Weather Report