JAZZ遊戯三昧

オススメのジャズアルバムを紹介してます。

DOMi & JD BECK ドミ& JDベック NOT TiGHT

ワクワクする! 「軽さ」と「確かさ」

あまりこれまで聴いたことのないタイプの音楽でも

わたしが、惹きこまれ、ワクワクしてしまう時に感ずるときの傾向として、

いつも「軽さ」と「確かさ」の感覚というものがある。

「確かさ」とは、

  音楽の基本やテクニカルな素養があるレベルに到達していること。

「軽さ」「軽やかさ」とは、

  展開、アプローチ、発想が斬新で独創的なのだけれど、

  そのことを全く感じさせない、メソッドを超越したセンスがあること。

「確かな」音楽は、数多(あまた)あるかもしれないが、

なかなか上質な「軽さ」「軽やかさ」を纏った音楽は、そう簡単には生まれない。

 

思うに、歴史的な名盤と言われるものも、

常に「軽やかさ」を身につけている。

説明的でこれ見よがしの、押しつけ的な「重さ」から解放されて、

既にあるべきしてあるという、「軽さ=余裕」を伴う存在感が際立っているのが、

名盤の条件なのであろう。

 

もっと言えば、「軽さ」とは、

必然でありながら、

どこにでも飛翔していってしまえるような自由度と開放感を

併せ持っているのである。

 

まあ、簡単に言えば、

聴いていて、恐ろしく心地よく気持ちが奪われてしまうのである。

心がウキウキして、フワフワして、

あゝ、いいなぁと溶けてしまって、聴き耽ってしまうのである。

 

いけない、全くこのアルバムの二人の主役について全く紹介していない。

恐るべき、才能。

とだけ、コメントしておこう。

 

1 LOUNA’S iNTRO
2 WHATUP
3 SMiLE
4 BOWLiNG (feat. Thundercat)
5 NOT TiGHT
6 TWO SHRiMPS (feat. Mac DeMarco)
7 U DON’T HAVE TO ROB ME
8 MOON (feat. Herbie Hancock)
9 DUKE
10 TAKE A CHANCE (feat. Anderson .Paak)
11 SPACE MOUNTAiN
12 PiLOT (feat. Snoop Dogg, Busta Rhymes & Anderson .Paak)
13 WHOA (feat. Kurt Rosenwinkel)
14 SNiFF
15 THANK U

 

ハンコック をフャーチャーした「moon」    粋だなあ!!!


www.youtube.com

 

 

 

Tommy Flanagan トミー・フラナガン Overseas

あゝ 理想のGroove!

 

あまりにも有名な、トミー・フラナガンの初リーダー作品にして、

最高傑作の一つである。

ジャケットといい、メンバーといい、選曲といい、

全てが素晴らしい作品である。

 

もう最初の「リラクシン・アット・カマロ」を聴くだけで、

そのスリリングに疾走する一体感に心奪われてしまう。

今日、聴き返してみて、改めて気づいたことは、

エルビンのドラムが全てブラシワークであること。

この気持ちの良いノリは、

エルビンのオンリーワンなタイム感覚によるところが大きいかもしれないが、

正確無比なトミフラのフィンガリングと相まって、

独特のグルーブ感を生んでいる。

 

ブルージーでありながら、理知的で洗練した即興演奏とはこうあるべきだという、

いつ聴いても勉強になるエッセンスが至る所に詰まっている。

 

ジャズピアニストとしては、玄人好みのピアノで、

ロリンズやコルトレーン名盤のサイドメンを務めたという威光で、

無視できない重要ミュージシャンのような捉え方をされ気味のような気はするが、

もっともっとその卓越した才能がクローズアップされていい、バチューオーゾである。

ホビー・ティモンズ、ソニー・クラークとともに

もっともっともっともっと、聴いてほしいピアニストの一人である。

 

Tommy Flanagan (p)
Wilbur Little (b)
Elvin Jones (ds)

Recorded by Gosta Wiholm

Recorded 1957.8.15

  1. Relaxin’ At Camarillo
  2. Chelsea Bridge
  3. Eclypso
  4. Beat’s Up
  5. Skal Brothers
  6. Little Rock
  7. Verdandi
  8. Delarna
  9. Willow Weep For Me


    www.youtube.com

Joel Ross ジョエル・ロス The Parable of the Poet

優しさと、大らかさに満ちた音楽。傑作である!

こういう音楽を聴くと、

音楽ってすごいなぁと今更ながら、感慨に浸ってしまう。

じわーっと心の奥に滑り込んでいくような感覚。

傑作であると思う。

 

個々のメンバーの技量もさることながら、

多分、入念な構想と綿密な推敲がなされた努力の賜物だと思うが、

そんなことを、微塵も感じさせない、

限りなく、優しく、大らかで、ナチュラルな音楽になっている。

 

アルバムタイトルの「Parable」とは、「たとえばなし」の意。

「芸術の真髄は、模倣と様式にある」といみじくも述べたのは

確か、池田満寿夫だったと思うが、

「たとえばなし」は、日常の出来事を、

詩(アート)へと昇華させる「比喩」の技法と読み替えていい。

ジャズの伝統を取り入れ(模倣)し、「たとえばなし」=比喩の技法で、

新たな様式に築き上げていく。

そんな風に、このアルバムを捉えたい。

 

個々の楽器、演者のエレメントが、個々に主張して、触発し合うというより、

個々の演奏が、見事なタペストリーに織り込まれていくような、

全体のトーナリティを強く発揮した音楽である。

シーツ・オブ・サウンド

とても上質で繊細かつのびやかで美しい絵巻物を見るようである。

 

今のところ、今年度のベストのアルバムてある。

 

Joel Ross -  Vibraphone
Immanuel Wilkins: - Alto Saxophone
Marquis Hill -Trumpet
Maria Grand –Tenor Saxophone
Kalia Vandever -Trombone
Sean Mason -Piano
Rick Rosato -Bass
Craig Weinrib -Drums

 

1. PRAYER
2. GUILT
3. CHOICES
4. WAIL
5. THE IMPETUS (To Be And Do Better)
6. DOXOLOGY (Hope)
7. BENEDICTION

 


www.youtube.com

 

 

 

Charlie Parker  チャーリーパーカー  With Strings

アドリブがテーマになりうる

 

人には、何度聞いても聞き飽きない名盤というものがあるが、

私にとって、その代表格のようなアルバム。

シンプルにストリングスをバックにパーカーが流暢に歌っている。

ホントに気持ち良さげなのである。

 

パーカーがストリングスの起用をプロデューサーに懇願したという言い伝えから、

やはり、彼は、自分が創造したスタイルを、クラシックなフォーマットで、

ちゃんと残しておきたかったのではないかと思うのである。

それほど、このアルバムでの、彼の即興は無駄がなく、洗練されており、

彼のイディオムのエッセンスが凝縮されている。

 

テーマの後に奏でられる、パーカーの切ないアドリブは、あまりに美しい。

空の彼方に翔んでいって溶けてしまいそうである。

 

やはり、圧巻は「ジャスト・フレンズ」!

痺れまくりの演奏である。

テーマの提示が、最初から原曲のメロディーと即興との絡み合いで始まり、

原曲を非常にスリリングに構成し直している。

また、エンディングの素晴らしいこと。

 

即興自体が、テーマになりうるような表現力。

ミュージシャンを志すものにとって、

「歌う」ことの大切さを、改めて思い知る素晴らしいアルバムである。

 

1. What Is This Thing Called Love
2. April In Paris
3. Repetition
4. Easy To Love
5. I'll Remember April
6. Just Friends
7. You Come Along

8. April In Paris
9. Summertime
10. I Didn't Know What Time It Was
11. They Can't Take That Away From Me
12. East Of The Sun
13. I'm In The Mood For Love 

 

あまりにも素晴らしい「ジャスト・フレンズ」


www.youtube.com

Melissa Aldana メリッサ・アルダナ 12 Stars

メリッサ・アルダナのブルーノートデビュー作

 

メリッサ・アルダナの技量と可能性を知ることのできる傑作である。

インプロバイザーとしての技量も素晴らしいが、

音楽全体の構成、展開力を備えたオーガナイザーとしての可能性感を感じる。

 

演奏にも参加している、ギターのラージ・ルンドの

プロデュースという点も興味深い。

全体的に、瞑想的、思索的なトーンで、内へ内へと向かうような感覚。

深い深い沼に、徐々に沈み込んでいくような印象は、

ラージとメリッサの内向的な、共鳴する感覚なのかもしれない。

4.曲目の「Emilia」などは、

とても穏やかだが、危ういダークネスを宿していて、気味が悪いほどだ。

 

彼女の生き様や想いをアイコン的にデザインしたジャケットも秀逸で、

このアルバムに賭けた彼女の強い思いを感じる。

 

こういう音楽を聴いていると、創造力を掻き立てられる。

感情の趣くままにと言うのでもなく、

極めて抑制的に、慎重に言葉を選んで、

楽曲を創りあげていく、内に秘めた強力なエナジーと冒険心に、

改めて触発されるのである。

 

 

Melissa Aldana(Ts)

Sullivan Fortner(Key)

Pablo Menares(Bass)

Kush Abadey(Ds)

Lage Lund(Gt)

 

1. Falling
2. Intuition
3. Intro to Emilia
4. Emilia
5. The Bluest Eye
6. The Fool
7. Los Ojos de Chile
8. 12 Stars

 


www.youtube.com

Chick Corea And Gary Burton チック・コリア&ケーリー・バートン In Concert, Zurich,

青春の熱くも儚い、思い出

この豪奢な感じの2枚組のレコードを買った時の興奮は、

今でもよく覚えている。

そして、また、針を落として、スピーカーから流れる、

二人の一糸乱れぬ、緊張感のある完璧なデュオ・プレイを聴いて、

心から打ち震えたものだ。

 

当時高校2年生だった僕は、何を思ったか、このLPを聴いて、

ある決意を固めた。

当時、それほど話したこともない、憧れの女の子に告白しようと。

それも、ラブレターを添えて、「このLP聴いてみて」と、

勇気を振り絞って、彼女に渡したのである。

 

僕には、確信があった。

それほど、このLPには、当時の僕の心を鼓舞し、勇気づけ、

必ず願いが叶うという、自信と勇気を与えてくれた。

「きっと、これを聴いてくれれば、僕の気持ちは伝わり、満願成就!」

 

彼女は、手紙とLPを一旦受け取ってくれ、

返事を後で聞かせてくれることになった(と記憶している)。

その夜、今頃、LPを聴いて、彼女の心は感動に打ち震えているだろうと、

勝手な想像を膨らまし、眠れぬ一夜を過ごした。

 

翌日、LPの収まったビニールケースを手に、

「これ、ありがとう。私付き合っている先輩がいるの、ごめんなさい」

と言って、LPを返されたのである。

「あ、はい。わかりました」と僕は言ったような気がする。

 

僕が悲しかったのは、既に付き合っている人がいて、フラれたという事実よりも、

LPを聴いた感想や印象を何も語ってくれなかったことにあった。

 

今から、考えてみれば、高校生の女の子にジャズなんか聴かせても、

殆どの子は、響かないのは、当たり前なのだが、

当時の僕は、このLPの音楽の魔力を、信じ切っていたのである。

それほど、このLPは、私にとって、説得力と高揚感が備わった

ライブアルバムであり、青春の熱くも儚い思い出そのものなのである。

 

特に「Tweak」を聴くと、今でも切なくなってしまう・・・・。

 

 

Chick Corea(p),

Gary Burton(vib)

 

Senor Mouse 9:53

Bud Powell 8:30

Crystal Silence 11:53

Tweak 5:59

Falling Grace 5:05

Mirror, Mirror 5:28

Song To Gayle 6:59

Endless Trouble, Endless Pleasure 4:49


www.youtube.com

 

 

 

魚返 明未 & 井上 銘

心に沁みる音色

f:id:zawinul:20220312225305j:plain

 

おがえりあみ と いのうえめい

 

名前もいいが、音楽もいい。

井上銘のギターの魅力は、かねがね、書き留めておきたかった。

 

まずは、彼の奏でるギターの音色の魅力である。

非常にシンプルでありながら、艶があって、奥行きが深くて、心に沁みてくる。

そして、時にハートに突き刺さるような鋭利さも・・・・

言葉では伝えにくいのだが、

やはり色で言えば、ブルーであり、孤高であり、切なさがある。

一瞬にして、私の心を捉えてしまう説得力のある音である。

 

彼の心と、楽器であるギターが、一体化しているようにも感ずる。

ギターを通して、生身の彼の「生」が剥き出しにされているような気がする。

身を削って演奏しているような、ある意味ヒリヒリした痛々しささえ、

感じてしまう演奏。

ときに、自分の心に迫ってくる音楽というものは、

えてして、そうした、痛々しくも、切ない感覚を有している。

ロリンズ、コルトレーンキース・ジャレットエバンス、、、、、

 

デュオというフォーマットだけに、

井上のピュアなエレメントが、より直に伝わってくる。

 

井上銘を聴くといつも、

自分がお気に入りの他のアーティストと共演させたら・・・・・、

という妄想が生まれてくること。

是非、治田七海との共演を期待する。

 

 

魚返 明未 (p)
井上 銘 (g)

 

1. きこえない波
2. サイクリングロード
3. もず
4. かなしい青空
5. 丘の彼方
6. 隔たり
7. Herbie Westerman
8. 縮む
9. 静かな影

 


www.youtube.com


www.youtube.com