JAZZ遊戯三昧

オススメのジャズアルバムを紹介してます。

Dexter Gordon デクスター・ゴードン Go!

軽妙洒脱とはこういう音楽をいう

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軽妙洒脱の類語を調べると、いろいろ出てくる。

酒酒落楽、飄々とした、洒落っ気のある、脱力した、垢抜けた、・・・

全部、ゴードンの音楽そのものと人となりを形容するに相応しい、言葉である。

背が高く、ハンサムで、オシャレ、

テナーサックスを吹く姿は、さぞかしカッコよかったのでしょうね。

リアルタイムで彼の演奏を観ることができたらと強く思うアーティストの一人です。

 

何より、このテナーサックスのブロー!

いつ聴いても、ゴードンは変わらない。

リラックスしていて、飄々としていて、少し脱力した感じが、なんとも魅力的。

バップイディオムに洗礼されているが、遊び心のあるフレーズのチョイスや、

時にはモーダルなスケールも織り交ぜながら、テンポの速い曲も、

マイペースでゆったり吹いてるかのように聴こえてくる。

天性の音楽センスの持ち主なのである。

 

そして、何よりソニー・クラーク、ブッチ・ウォーレン、ビリー・ヒギンズ

からなる鉄壁のリズム陣のサポート。

テークスター・ゴードンの魅力を堪能できる最高の一枚だと思います。

 

Dexter Gordon (ts)
Sonny Clark (p)
Butch Warren (b)
Billy Higgins (ds)
Recorded 1962

 

1. Cheese Cake
2. I Guess I’ll Hang My Tears Out To Dry
3. Second Balcony Jump
4. Love For Sale
5. Where Are You
6. Three O’Clock In The Morning

 


I Guess I'll Hang My Tears Out to Dry - Dexter Gordon Quartet

 

 

Chico Pinheiro シコ・ピニェイロ City of Dreams

シコ・ピニェイロ フューチャリング クリス・ポッター

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シコ・ピニェイロ というブラジルのギタリスト。

初めて聴いてみたのですが、これまた、何たるテクニシャン!

正確無比なフィンガリング、溢れ出るメロディーワーク、

ブラジル音楽のフィーリングとジャズギターのテクニカルな面を併せ持つ、

こんなギタリストがいるとは、全然知りませんでした。

 

しかも、今作は、なんとクリス・ポッターが参加している!

クリス・ポッターもシコ・ピニェイロに負けじと張り切った

ソロを取っています。

 

これから、聴き込んでみようと思うのですが、

ブラジルテイストとストレートアヘッドなジャズテイストが混在した、

なかなか貴重なアプローチのアルバムと言ったら良いのでしょうか。

まだ、確信までは行かないのですが、このギタリストのポテンシャルの高さに、

少し高揚した気分になっています。

 

イントロダクションとしての動画(タイトル曲)を見ていただくとわかるのですが、

嬉しそうにプレイしている姿と、奏でられる音楽の凄さとのギャップが面白い。

調べると、既に錚々たる大物プレーヤーとも共演を果たしてきているようですが、

まだ年も若そうだし、これから益々の活躍が期待されますね。

 

Chico Pinheiro (g,vo)
Tiago Costa (p,key)
Bruno Migotto (b)
Edu Ribeiro (ds)
Chris Potter (ts)

2020年作品

 

1. City Of Dreams
2. Interlude
3. ​Long Story Short
4. ​Estrada Real
5. Gesture
6. Invisible Lights
7. Encantando
8. Theme
9. Vila Madalena
10. Farol
11. Up In The Air

 


Chico Pinheiro & Group - CITY OF DREAMS

 

 

 

 

John Scofield ジョン・スコフィールド Swallow Tales

スワロー讃歌 ツバメの物語

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全篇、スティーブ・スワローの曲である。

 

ジャズビアニストの石井彰が、スワローとのデュオ作品、

「That Early September」(2001年)を制作するに至った際の

エピソードが、なかなか面白い。

石井彰の憧れの存在であったスワローに、ニューヨークで共演を打診し、

レコーディングまでに至った「幸せ」がライナーノーツに瑞々しく記録されている。

石井は、スワローを評して、

「まず彼が書く作品が好きなんです。不思議で優しさがあって、

ロマンティックでもある。終わりがないというか、循環する曲も多く、

まるで一筆書きのよう」と語っている。

 

スワローの魅力に取り憑かれたもう一人のミュージシャン、

ジョン・スコフィールドの新作は、タイトルが「スワロー・テイルズ」なのだ。

7曲目の「AWAY」を聴くと、ジョン・スコのスワローへの愛が、

むき出しで伝わってくる。

 

エンターテイメント性は、あまりないかもしれないが、

こういう音楽を聴くと、私は、とても贅沢な気分になる。

三人の演者がそれぞれ、演奏に集中し、黙々と自分の役割を果たしているだけなのかも

しれないのだが、まさしくそのこと自体が、音楽を志す者にとって、

羨ましくもあり、痺れるのであり、嘆息してしまったりするのである。

 

ずっーと聴いていたい。

今のところ私にとって、今年のベストである。

 

John Scofield (guitar)
Steve Swallow (electric bass)
Bill Stewart (drums)

2019年3月The James L.Dolan Recording Studio録音

 

1. She Was Young
2. Falling Grace
3. Pourtsmouth
4. Awful Coffee
5. Eiderdown
6. Hullo Bolinas
7. Away
8. In F
9. Radio


Away

JIMMY RANEY ジミー・レイニー TWO JIMS AND ZOOT

深夜に聴きたい渋目の室内楽ジャズ

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密かに楽しむ名盤の代表格、「TWO JIMS AND ZOOT」

静かな真夜中に、少し小さめのボリュームで、耳を傾けたいアルバムである。

 

1964年の録音、二人のギターにズート・シムズが乗っかるという編成の妙、

印象的なジャケット、バランスのとれた選曲などなど、

地味ではあるが、芳醇な香りとテイストを秘めた、

年代物のウィスキーのような味わいと余韻が残る作品。

 

ジミー・レイニーはジム・ホールより三歳年上で、

ホールがニューヨークでの生活に慣れるのに随分と力になってくれたそうである。

そんな信頼関係の中で、また、様々なギグを通じて生まれた、

レコーディングのアイデアなんだろうと思う。

ツインギターの役割が相互補完的で、比較的似たような音質ではあるが、

構成上、非常にうまく棲み分けができていて、

素晴らしいアンサンブルに仕上げているところは、

やはり、この二人だからこその偉業!

そして、ズート・シムズの参加が、水墨画の世界に妖艶な色を添えている。

 

個人的には、「All Across The City」という、

ジム・ホールの曲が大好きなのであるが、

自分の曲ながら、ホールは、バッキングに徹しているところが、なんとも奥床しい。

ジム・ホールというギタリストは、目だないようにして目立つというか、

アート・ファーマー、ロリンズ、エバンスといった、フロントの持ち味をうまく

引き出す、素晴らしいギタリストであると思う。

そんな、ホールの天賦の才を、自らのギターセンスと対比させながら、

これだけ緻密で、洗練された作品をブロデュースした、ジミー・レイニーに

拍手を贈りたい。

 

ZOOT SIMS(ts),

JIMMY RANEY(g),

JIM HALL(g),

STEVE SWALLOW(b),

OSIE JOHNSON(ds)

 1964年5月録音

 

1.HOLD ME

2.A PRIMERA VEZ

3.PRESENTE DE CARNAVAL

4.MANHA DE CARNAVAL

5.ESTE SEU OLHAR

6.BETAMINUS

7.MOVE IT

8.ALL ACROSS THE CITY

9.COISA MAIS LINDA

10.HOW ABOU YOU?

 


Hold Me

 

Steve Cardenas スティーヴ・カーディナス Blue Has a Range

安心のギター スティーヴ・カーディナス

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2014年に録音された「Melody In a Dream」という作品では、

あのトーマス・モーガンとジョーイ・バロンという曲者を従えながら、

心が和らぎ、まったりくつろげる柔らかなサウンド作りに、

ずいぶん惚れ込んだことを思い出す。

 

それ以来、このギタリストをあまり聴く機会がなかったわけだが、

ティーヴ・カーディナスが、珍しくピアノをフューチャーした新作を発表したので、

久しぶりに、聴いてみたら、これがなかなか、予想以上に素晴らしい。

 

相変わらず、至極、真っ当で、落ち着いた、渋いプレーなのであるが、

ブライアン・ブレイドやジョン・パティトゥッチとの共演のほか、

作曲家あるいは、プロデューサーとしても評価の高いピアニスト、

ジョン・カウハードが加わったカルテットとしての演奏は、

全体に華があり、相性も良いのか、

より一層、カーディナスの持ち味の良さが、引き出されているような気がする。

 

それにしても、ブライアン・ブレイドというドラマーは、器用な人である。

どんなスタイルのフロントの特徴も吸収して、引き立つリズムを生み出している。

前に前に出るタイプでないが、メンバーの個性に応じた最適なグルーブを提供できる

稀代の名ドラマーであると、このアルバムを聴いて改めて実感した。

 

安心して、聴くことのできる非常に高度なギター・カルテット。おすすめです。

 

Steve Cardenas (g)

Jon Cowherd (p)

Ben Allison (b),

Brian Blade (ds)

 

1. Lost And Found
2. Blue Language
3. Language Of Love
4. Highline
5. Fern’S Guitar
6. Reflector
7. Siquijor
8. Signpost Up Ahead
9. Blue Has A Range

 

紹介アルバムのメンバーのうち、ベースのみ違うメンバーでの演奏

(このアルバムでの曲ではありませんが・・・)


Jon Cowherd Quartet recording "Bronco Braun" (HD)

 

Keith Jarrett キース・ジャレット Jasmine

このキース、切なすぎます。

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恥ずかしながら、少し感傷に浸りたいとき、泣きたいときに

思わず手に取ってしまうのが、このアルバム。

このヘイデンとの30年ぶりのデュオ作品を聴くと、

あまりに切なくて、泣いてしまうのです。

悲しい曲調とか、大げさな嘆きとかいった感じでは、全くない。

むしろ、淡々とした、時にはからっとした明るささえ備えた、

二人のゆっくりした進行の中に、深い悲しみのトーンが

通底していると言いましょうか、

沁み込んでしまっているといいましょうか。

キースの長いキャリアにおける悲喜こもごもの人生と、

それと比べて極めて凡庸な自分の人生とを恐れ多くも重ね合わせたりして、

とにかく泣けてくるのです。

不器用にさえ聴こえる二人のやりとりは、

キース初心者には、お勧めできないかもしれませんが、

年を重ね、いろんな経験を積み、時には病に倒れ、そして立ち直り

ふと人生を振り返ったときに、滲み出てくるようなダイアローグが

とても、心に沁みてくるのです。

意図して、わざわざこういうテイストを演出して、創り込んでいたとしたら、

キース恐ろし! となりますが、

多分、このどこか、たどたどしくも、一歩一歩噛みしめながら進む、語り口は、

キースの正直で、率直な表現の露呈であると思うのです。

とても不思議な感覚のする、キースの他作品では見られない類の

音楽であると思います。

芥川賞作家の堀江敏幸も、この作品に触れて、次のように語っています。

ジャスミン」には、「無意識の言い落とし」があると。そして、

「なにかひとつだけ自由にならない音が、使ってはならない音があるような気

がしてくるのだ」と。

堀江氏の意味深な言葉にも戸惑いながら、

本当はキースとヘイデンしか分かり合えない境地の極意を、

ありがたく拝聴するしかないのである。

もう一枚「ラストダンス」というアルバムもありますが、断然こちらの

ジャスミン」が素晴らしいので・・・

切ないキースをご所望の方にぜひ。

 


Charlie Haden   double bass

Keith Jarrett   piano

1."For All We Know" (J. Fred Coots, Sam M. Lewis)

2."Where Can I Go Without You" (Peggy Lee, Victor Young)

3."No Moon at All" (Redd Evans, David A. Mann)

4."One Day I'll Fly Away" (Will Jennings, Joe Sample)

5."Intro/I'm Gonna Laugh You Right Out of My Life" (Cy Coleman, Joseph McCarthy)

6."Body and Soul" (Frank Eyton, Johnny Green, Edward Heyman, Robert Sour)

7."Goodbye" (Gordon Jenkins)

8."Don't Ever Leave Me" (Oscar Hammerstein II, Jerome Kern)

released on 12 May 2010.

 

アルバムには無い曲ですが、「How Deep is the Ocean」


Keith Jarrett + Charlie Haden

 

 

Carlos Aguirre カルロス・アギーレ La Música del Agua 

あまりに美しい歌声 川の流れのように

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アルゼンチンの秘宝、カルロス・アギーレのソロ作品である。

アギーレの作品は、ハズレがなく、どれも素晴らしいが、

今回は、タイトルにあるように、「水の音楽」をテーマにした、

瑞々しくも清らかで美しい作品群である。

 

実際に、アルゼンチンとウルグアイの間を流れるラ・プラタ川を

アギーレは長年のテーマとして取り組んでおり、

今回のアルバムも、この川に育まれた雄大な自然と、

その流域に暮らす人々の生活や文化を題材にしたそうで、

彼のピアノとボーカルのみで、限りなくピュアで清らかな作品に仕上げている。

 

まずは、この歌声。ミルトン・ナシメントに似た感覚を呼び起こす、

とても透明感のある、繊細でおおらかな歌声を堪能いただきたい。

いつまでも佇んで眺めていたい、川の流れのよう。

久々に、添加物のない、心身が洗われるような音楽に触れることが出来た気がする。

 

Carlos Aguirre(piano&vocal)

 

(1) Juancito en la Siesta
(2) Pan del Agua
(3) Corrientes Cambá
(4) Santiago
(5) El Loco Antonio
(6) Río de los Pájaros
(7) Canción de Verano y Remos
(8) Pasando Como Si Nada
(9) Sentir de Otoño
(10) La Cañera
(11) Leyenda
(12) Pato Sirirí

 


Juancito en la siesta (Chacho Muller) - Álbum: "La música del agua"