JAZZ遊戯三昧

オススメのジャズアルバムを紹介してます。

IRENE KRAL アイリーン・クラール WHERE IS LOVE?

 声というものの相性

f:id:zawinul:20200516200049j:plain


心の琴線に触れる歌声というものは、誰しもあると思う。

わたしの場合、

女性ボーカルでは、このアイリーン・クラールとキアラ・シベロ。

男性ボーカルでは、トニー・ベネット

 

1978年、46歳でガンで早逝したアイリーンは、

ロイ・クラール(ジャッキー&ロイ)の妹であることは、

あまり知られていないかもしれない。

 

このアルバムの冒頭曲「I LIKE YOU,YOU'RE NICE」を聴いていただきたい。

少し鼻にかかった、適度な太さのある、柔らかな音質の歌声。

音程を伸ばす時のゆっくりと、たゆたうビブラートが、なんとも心地よい。

 

ボーカリストはピアノとのデュエットの時こそ、その真価を発揮するのでは。

ビル・エバンストニー・ベネットのデュオも両者の魅力を余すところなく

引き出した傑作であると思うが、

このアラン・ブロードベントとの語り合いも、

お互いが信頼し合って、心ゆくまで、その類いまれな歌心を発揮した

歴史的名盤であると思う。

 

 

RENE KRAL(vo)

ALAN BROADBENT(p)

 

1.I LIKE YOU,YOU'RE NICE

2.WHEN I LOOK IN YOUR EYES

3.A TIME FOR LOVE/SMALL WORLD

4.LOVE CAME ON STEALTHY FINGERS

5.NEVER LET ME GO

6.SPRING CAN REALLY HANG YOU UP THE MOST

7.LUCKY TO BE ME/SOME OTHER TIME

8.WHERE IS LOVE

9.DON'T LOOK BACK

 

REC:December 1974

 

 


www.youtube.com

 

Yonathan Avishai ヨナタン・アヴィシャイ Joys and Solitudes

静かなる挑戦

f:id:zawinul:20200515225646j:plain

 

最近、聴く頻度が極めて高いピアニスト。

 

押し付けがましくなく、遊び心があって、

寄り道したり、時々立ち止まったり、

懐かしい思い出がふと蘇ったり、少し冒険してみたり、

そんな語り口のヨナタンのピアノが大好きだ。

 

フェリーニの映画のニノ・ロータのようなニュアンスや、

モンク的な朴訥感が感じられたり、一見、脈絡のない散漫な印象を受けるが、

聴き込むほどに、珠玉の愛おしいフレーズが立ち現れてくるのである。

 

これまで聴いたことのないタイプの不思議なピアニストである。

曲作りにおいて、実はかなり計算されていると思うが、そのことを感じさせないで、

いかにも気ままに弾いているような仕上げ方が、凄い。

 

・ピアノの音色(おんしょく)が、とても美しく、艶っぽい。

・断片的なフレーズの積み重ねが、絶妙に再構成されている感じ。

・弾きすぎない。もっと欲しいと思っても、留めておく。淡々としている。

などなど、彼の魅力をなんとか伝えようとするが、上手くいかない。

聴き重ねるほどに、心のひだの奥に響いてくる。

ずっーと聴いていたい。

 

 

Yonathan Avishai   / Joys and Solitudes

 

Yonathan Avishai (p)

Yoni Zelnik (double bass)

Donald Kontomanou(ds)

 

1. Mood Indigo
2. Song For Anny
3. Tango
4. Joy
5. Shir Boker
6. Lya
7. When Things Fall Apart
8. Les pianos de Brazzaville

Recorded at Lugano’s Auditiorio Stelio Molo RSI, in February 2018
Produced by Manfred Eicher.

 


Lya

 

 

Wes Montgomery ウェス・モンゴメリー A Day In The Life

時を経て輝く

f:id:zawinul:20200512223651j:plain

時を経て、作品そのものは、変わらないが、

時を経て、それを聴く私は、変わっている。

当たり前の話だが、

昔よく聴いた音源を久しぶりに聴くと、私の前に立ち現れてくる音像によって、

心が高ぶり、強い幸福感を感じる場合もあれば、

その反対でなんの感慨も起こらない場合もある。

 

KUDO様のジャズCDの個人ページブログで紹介のあったこのアルバムを

数十年ぶりに聴いた。正直驚いてしまった。

昔、本当によく聴いたアルバムであることは確かなのだが、

当時、それほど思い入れがあったわけではなかったと思う。

だから、自分にとってそんなに重要な作品だとは全く思っていなかった。

しかし、数十年ぶりに聴き始めたら、

今まで感じたことのない高揚感と幸福感に満たされた。

 

ノスタルジーと言ってしまえば、話は簡単なのだが、

思うに、若い時に繰り返し聴いたこの音源が、

いかに私の脳裏の奥深いところに強い痕跡を残していたのかに改めて気づくとともに、

刺激的で魅力ある音像として、装いを新たにして、私の前に立ち現れてきたのである。

 

例えば、4曲目の「カリフォルニア・ナイツ」という、

マーヴィン・ハムリッシュ作曲の少し、憂いを秘めた曲調に乗って爪弾かれる

ウェスのソロのなんと素晴らしいこと。思わず涙してしまいました。

艶っぽくて、わかりやすくて、可愛らしくて、なんて素晴らしいのでしょう!

 

イージー・リスニングジャズと片付けてしまうには、惜しい気がするのです。

むしろ、ウェスの魅力を、ある意味、最大限引き出しているのではないかと。

ウェスの画期的な奏法を、分かりやすくそれも高度なアレンジで纏め上げた、

クロスオーバジャズの稀有な成功例と言えないでしょうか。

 

全ての曲が素晴らしいが、特に好きなのは、「カリフォルニア・ナイツ」、

「トラスト・イン・ミー」の後半部分、そして、ご機嫌な「ザ・ジョーカー」。

ぜひ多くの人に聴いてほしい、最高のアルバムです。

 

 

Wes Montgomery  /A Day In The Life

Wes Montgomery – guitar
Herbie Hancock – piano
Ron Carter – bass
Grady Tate – drums
Ray Barretto – percussion

 

1. A Day in the Life
2. Watch What Happens
3. When a Man Loves a Woman
4. California Nights
5. Angel
6. Eleanor Rigby
7. Willow Weep for Me
8. Windy
9. Trust in Me
10. The Joker

Recorded June 6, 7, 8 and 26, 1967

 


California Nights

 

 

 

 

須川崇志 バンクシアトリオ Time Remembered

林正樹という、日本の宝

 

f:id:zawinul:20200509144514j:plain


SUZUCKさんのブログで、最近知った林正樹というアーティストに、

最近、とても心を奪われている。このところ彼を追っかけている。

 

日本で、これほどの素晴らしい感性を持ったピアニストに出会ったのは、

本当に久しぶりである。

かつて、かなり前に港区のボディアンドソウルで聴いた

ピアニスト中島政雄に出会った時の、深く、肌感覚で迫ってくる、心地よさと

同じものを感じる。

 

言葉で、林正樹の魅力を説明するのは難しいのだが、あえてトライしてみると

 

◯タイム感覚が優れている。

 語り口というか、ノートとノートの繋げ方、間の取り方といった、

 タイム感覚が絶妙である。

◯曲全体を貫くトーナリティの豊かさ、確かさ

 これが、超一流ミュージシャンが持つ共通の資質と思うが、最初の一音から

 最後まで、固有の色、調性を生み出す底力があること。

◯活動が多彩であること

 様々なジャンルの音楽を吸収し、深いバックグラウンドの中から

 生み出される活動の多様性。 ←これが林正樹、最大のポテンシャル

 

彼のリーダー作品も、実に素晴らしく、抑制の効いた、極めて内省的で

かつ緻密な演奏を披露しているが、

この作品も、今を時めく、須川、石若というクリエーターとの触発によって

生まれた、刺激的なインタープレイが、唯一無二でほんとうに素晴らしい。

 

このメンバーで作品を世に送り出そうとした仕掛け人の方は誰なんでしょう。

世界に通用する作品として、日本が誇れる軌跡である。

 

林 正樹 (piano)
須川 崇志 (bass)
石若 駿 (drums except 6)

 

1. Time Remembered
2. Yoko no Waltz
3. Nigella
4. Banksia
5. Under The Spell
6. Lamento (p & b duo)
7. Largo Luciano
8. Yoshi

2019年7月31日 録音

 


須川崇志バンクシアトリオ「Banksia」

 

 

OSCAR PETRESON オスカー・ピーターソン  We Gets Request

こんな風に弾けたなら

 

f:id:zawinul:20200507215341j:plain

 

ジャケット良し、録音良し、選曲良し、

そして何より、特にこのアルバムのピーターソンは本当に洗練されている。

この1964年に制作された音源を聴くたびに、

「こんな風にオシャレに弾けたらいいなぁ」とため息が出ます。

 

そんな個人的な感傷は別にして、このアルバムの素晴らしさ、魅力を、

少し分析的にご紹介していきたいと思います。

 

◯いつもより、ピーターソンのソロが抑制が効いていること

◯テーマの解釈やアレンジが、トリオメンバーでかなり推敲されていること

レイ・ブラウンの合間に入るベースのリフが、えらく嵌っていること

◯録音バランスが素晴らしいこと

◯プリーズ・リクエストと言いながらも結構マニアックな選曲であること

 

どの曲も、本当に信じられない、素晴らしい出来なのですが、

特に、1曲目のCorcovado、2曲目の酒バラ、5曲目のHave You Met Miss Jones?

6曲目のYou Look Good To Meが白眉。

 

とにかく、四の五の言わずに、まずCorcovadoを聴いてみて下さい。

弦をジャーンとかき鳴らす出だしから始まって、たった3分に満たない演奏ですけど、

なんて小粋で、オシャレ、そして軽妙洒脱な展開なんでしょう。

ため息が出てしまいます。

 

Oscar Peterson(p)

Ray Brown(b)

Ed Thigpen(ds)

 

1 Quiet Nights Of Quiet Stars (Corcovado)
2 The Days Of Wine & Roses
3 My One And Only Love
4 People
5 Have You Met Miss Jones?
6 You Look Good To Me
7 The Girl From Ipanema
8 D. & E.
9 Time And Again

10 Goodbye J.D.

 

Vereve 1964年

 


Quiet Nights Of Quiet Stars (Corcovado)

 

LUCAS PINO  ルーカス・ピノ  THAT'S A COMPUTER

世の中には、なんと知らないことの多いこと! 
 

f:id:zawinul:20200505223105j:plain

グレン・ザレスキーでネット検索していたら、「365日J棟で」という
ブログに出会い、その中で紹介されていたこのアルバム。
一聴して、衝撃を受けました。
 
世の中には知らないことが、なんと多いことか、
気づかずに見逃していることが、なんと多いことか・・・と。
まあ、そんなことは、当たり前な話なんだけど、
このアルバムに出会えた嬉しさを、素晴らしさを伝えたくて、
早速、紹介させていただきます
 
本当に言い得て妙!、同感至極な解説でした。
まさに、「きゃっぷ」さん言われる通り、
「コンボジャズとオーケストラの間にある"ラージアンサンブル"のイメージにスポン!とハマった感じ」の通り、
完成度の高い、「丁度ええ」感じのアンサンブルで、
伝統に対するリスペクトも感じられる、非常に良質で、謙虚な、
それでいてレンジの広い音楽性を発揮しているところが、本当に素晴らしい。
 
ジャズという音楽が、こうした才能ある若い世代に引き継がれ、
新しい音楽へと発展させていることを、もっともっと多くの人に知って欲しいと
痛感した1日でした。
 

 

LUCAS PINO 

THAT'S A COMPUTER 
 
1  Antiquity
2  Horse of a Different Color
3  Film at 110
4  Look Into My Eyes
5  Frustrations
6  Sueno De Gatos
Baseball Simulator 1000

 

Personnel:

Lucas Pino (bass clarinet, tenor saxophone); Rafal Sarnecki (guitar);

Alex LoRe (alto saxophone); Andrew Gutauskas (baritone saxophone);

Mat Jodrell (trumpet); Nick Finzer (trombone);

Glenn Zaleski (piano); Jimmy Macbride (drums)

 

 


Antiquity

 

 

RICH PERRY QUARTET リッチ・ペリー  MOOD

いつまでも聴いていたい   いぶし銀のテナー

f:id:zawinul:20200504114836j:plain

 

少し古い作品の紹介になりますが、

リッチ・ペリーの作品を紹介します。

実は、最近までよく知らないプレイヤーだったんですが、最近よく聴いてます。

 

ティープル・チェイスのレーベルに多くの作品を残していますね。

そのどれもが、ずーっと気分良く、音楽に浸って、聴いていられるのです。

ハズレの音源が少ない。どれもいい。

押し付けがましくなく、包み込まれるような気分になり、誠に心地よいのです。

いつものメンバー、ピアノのハロルド・ダンコも渋い。渋過ぎる。そして上手い。

不動のメンバーでのバラード集。

こういう真に実力があるミュージシャンだからこそ遺せる

珠玉の演奏がここにあります。

一度、白昼に、youtubeで紹介している「オール・オブ・ミー」を

聴いてみてください。デイ・ドリーム・・・・

 

 

Rich Perry (ts)
Harold Danko (p)
Jay Anderson (b)
Jeff Hirshfield (ds)

 

1.Detour Ahead
2.But Beautiful
3.Everything I Love
4.Monk's Mood
5.Sometime Ago
6.I Fall In Love Too Easily
7.All Of me

2016年作品

 


All of Me